「レ・ミゼラブル」('15/6/20ソワレ)

レ・ミゼラブル
at中日劇場


††本日のキャスト††

バルジャン 吉原光夫
ジャベール 岸祐二
ファンテーヌ 知念里奈
エポニーヌ 昆夏美
マリウス 田村良太
コゼット 若井久美子
テナルディエ 萬谷法英
マダム・テナルディエ 森公美子
アンジョルラス 野島直人

ガブローシュ 松本涼真
リトル・コゼット 上山りのん
リトル・エポニーヌ 吉村宇楽

司教 伊藤潤一郎
工場長 田村雄一
バマタボア 宇部洋之
グランテール 菊地まさはる
フイイ 上野哲也
コンブフェール 原慎一
クールフェラック 高舛裕一
ジョリ 川島大典
プルベール 立崇なおと
レーグル 照井裕隆
バベ 藤田光之
プリジョン 北村がく
ラクスー 土倉有貴
モンパルナス 西川大貴

ファクトリーガール 三森千愛
買い入れ屋 廣野有紀
かつら屋 三戸亜耶
マダム 吉川恭子
女(宿屋の女房) 浅野実奈子
女(身替わりの妻) 藤咲みどり
女(病気の娼婦) 中西彩加
女(鳩) 穂積由香
女(あばずれ) 島田彩
女(若い娼婦) 山岸麻美子

指揮 若林裕治



2013年のレミゼ中日劇場で見納めました。
2015年のレミゼ中日劇場で見初めます。

新演出は、中日劇場サイズに合っていると思うんですよ。
帝劇もフェスも、ちょっと舞台が余っている感じがして。

また、中日劇場は舞台と客席の物理的距離があまりない。
そのため、臨場感があります。

今回も、プロローグから、物語世界にどっぷりと引き込まれました。

あ、プロローグといってもバルジャンが仮釈放になってから。
仮釈放になる前のジャベールとの絡みは、意外とあっさりしている感じ。
この時点でジャベールにとってバルジャンは、単なる罪人の一人でしかないように見えます。

仮釈放されてからのバルジャンは、まだまだ若いんですよね。
たぶん、捕まったのは10代後半だろうから、アラフォーてことだと思うんです。
まあ、この時代のフランスですから、今のアラフォーとは違うでしょうが…。
でも、まだまだ若い…壮年のバルジャン。
「自由だ…」というように、新しい人生を生きられると思ったでしょう。
それが、誰からも受け入れてもらえず。
牢獄で19年以上に、この経験が彼に世界を憎ませる原因になったのかなと感じました。
(この日のバルは、です)

その荒みっぷりが、切ないです。
転んだ小さな女の子を、思わず助け起こそうとしたバルジャン。
彼の中には、小さな子どもをいたわる心がちゃんと存在している。
でも、それを誰にも認めてもらえない。

…でもね。
やっぱり、プチジェルベのエピソードは、入れないで欲しいなあ。
入れるなら原作通りにして欲しい。

しかし、ここで荒めば荒むだけ、司教様と出会ったあとのバルジャンの改心が際だつ。
一瞬だけ、司教様は伊藤さんか…と,メンフィスのあとのnico動の放送を思い出してしまったのですが(伊藤さんに諭されるとか!と吉原さんが仰っていたのです)、それも本当に一瞬。
伊藤さんは、しっかり老けて見えて、しっかりバルジャンを立ち直らせていらっしゃいました。


その後、工場では一瞬、バルジャンと分からないくらい紳士。
工場長は、悪い顔していますよね!
ファンテは、突き飛ばされた状態から「夢やぶれて」を歌い出しますが、この流れはいいな。
工場から出て、突然、髪を下ろして、ロケット出して、座って…という段取りはあまり好きじゃなかったので。

その後、娼婦になったファンテを最初に買うのは工場長。
前回は、「あの人、工場長だよね」という感じでしたが、今回は、二人がしっかり目を合わせて、ファンテが驚いていたり、ことが済んだ後、娼婦たちから「工場長」と声をかけられていたりと、はっきり「工場長」であることを観客にアピール。
この演出は、あまり好きじゃないんですよね。
なんだか、工場長が悪い奴に成りすぎていて。


「WHO AM I?」は、バルジャンの気づきの歌で、私は大好きなんですが、ちょっと気になったのは「名乗れば牢獄、黙っていても地獄」の「黙っていても」が早すぎて、気づきがないように思えたところ。
ここは、「名乗り出れば牢獄なんだ」………「でも、黙っていても、地獄じゃないか」という気づきがバルジャンの中に生まれるはずなのです。
でも、英語ならこれくらいのスピードで歌うのはありですよね。
実際、CDとかはそうだったと思うし。
なら、なにがあかんのやろう…と考えていて、私なりの答は、「黙っていても」の「も」があかんのや!でした。
英語だと、「もしも黙っていれば…」ですもんね。
「も」って言った時点で、「地獄」というフレーズが頭に浮かんでいるはず。
英語だと、「もしも黙っていれば…(このまま多くの人の支えとなって生きていける? いや違う、そうじゃない。自分を捨てて、他人を陥れて)地獄じゃないか」という逡巡があると思える。
ここ、大事だと思うなあ…。


コゼットと出会ったときのバルジャン。
コゼットというファンテの娘、というくくりじゃなく、冒頭と同じように小さな子どもを助けてあげようという感じがしました。
「コゼット?」という驚きは無かった気がします。


パリのガブローシュ。
ちっちゃくて、生意気そうで、なかなか可愛い。
一癖ある感じで、ガブらしいです。

コゼットにお恵みをねだる小さな女の子。
…リトル・コゼットの筈はないから、リトル・エポニーヌ?

コゼットはちょっと丸顔ですが、なんだかぽやーっとした可愛らしさがあります。
マリウスと二人、ほのぼのとしたカップルで可愛い。

アンジョは、最初出てきたときに思ったのは、ちょっとぷくぷくしてるってこと。
背も低めなので、なんだか見た目、かつての坂元健児さんのアンジョみたい。

しかし、abcカフェでのアンジョ、結構、好みです。
どこがいいって、学生たちを見ているようで、見ていないところが。
なんて言うのかな。
目の前の友人たちと話しているのに、見ているのはもっと遠いところ。
目の前の人を通り越して、遙か遠くを見ているような遠い目。
現実を見ず、理想だけを追いかけているアンジョ。
そういうところ、私が思うアンジョに近いのです。
これは、最後まで変わらず。
理想ばっかり追いかけて、現実を見ないアンジョ。
でも、ガブが死んだことで、少しだけ現実にも目を向けた感じがした。
そのアンジョが「死のう!」と言ったのは、決して理想論じゃなかったんだろうな。

アンジョについて書いたので、ついでにグランテールについても。
新演出のグランは、アンジョのことを崇拝しているようには見えないんです。
むしろ批判的な目で見ている気がする。
今回も、そう思った。
革命に参加しているけれど、本当は彼らを止めたいのではないのか。
「Drink with Me」でバリケードから駆け下りてきてグランテールを見つめるアンジョ。
かつてはグランテールを責めるようであったり、他の学生を宥めたり、グランテールのことも受け入れたり…と二人の交流も見えたのですが。
今回は、グランテールがアンジョを責めているように見えた。
その責めるような視線に、耐えられなくなったアンジョから目をそらす。
しかし、「死のう!」と言った後のアンジョには、「行けよ」とでも言うように手を振り、彼らを止めるのではなくその生き方(死に方)を認めたように見えました。
この革命の見届け人。
そんな風にみえました。

そうそう、ジャベールを撃ち殺した(と学生たちが思った)後、バルジャンにかけられる言葉が変わっていました。
「よくやってくれました」が「感謝します」に。
前回の「よくやってくれました」がなんか嫌いだったので、変わってよかったです。

前後しますが、エポが手紙を届けるところ。
「坊や」に反発するように帽子をとりますが、女性だと分かった瞬間バルの態度が変わるのですね。
最初は、「坊や」だと悪いことをするって思っているのか?と思いましたが、女性が来たことに驚いた(何らかの覚悟をしていることに気が付いた?)のかなと、今は思っています。

エポは…。
コゼとしっかり目を合わせて、コゼもエポを認識したっぽい。
これは、エポにとっては辛いだろうな。
(しかし、マダム・テナルディエを怖がっていたコゼだったら、エポを見たらもっと反応がってもしかり、なんですけど)

ただ、最期、マリウスを庇ったことを、ちゃんとマリウスは認識してくれたっぽく見えたので、そこはよかったね、と。
エポ、バリケードに帰ってきてからマリウスには見つからないように、でも、ずっとマリウスを見つめているのが切なかった。


前回、謎だったキャンドル。
あれって、学生たちが自分の分まで生きろよってマリウスに言っているのか。
マリウスを見るみんなの顔がとても優しくて、「生き残った者」が自分を責めないよう見守っているようでした。

結婚式。
ウェディングケーキをぺろっとつまみ食いするマダム・テナルディエ。
こういうケーキ、フランスだったら作るんだろうか?
イギリスのウェディングケーキは違うよね。
マダムの「みんな気をつけてー」は、ちょっと「う〜ん」でした。
モリクミさんだから、いいけど。
地震をネタにしているみたいでね。


フィナーレ。
前回は、嫌だった司教様の登場が、今回は嫌じゃなかった。
「よく生きました」とバルジャンを労っているようで。

カテコで、ジャベールが出てきて、フィナーレの列にジャベが加われないことがやっぱり悲しかったですが。
でも、いつもに比べると、ジャベ可哀想…という気持ちは薄かった気がします。

カテコでは、リトル・コゼとリトル・エポを両脇に抱える、怪力バルジャンが可笑しかったです。
バルジャン、子ども好きだよね!