覚え書:「今週の本棚・新刊:『山女日記』=湊かなえ・著」、『毎日新聞』2014年09月14日(日)付。
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今週の本棚・新刊:『山女日記』=湊かなえ・著
毎日新聞 2014年09月14日 東京朝刊
◇『山女(やまおんな)日記』
(幻冬舎・1512円)
恋人、結婚、夫婦、親子、仕事。誰にも言えない悩みを抱える7人の女性たちが自分と向き合いながら山に登る連作長編小説。目次には7人が登る名山の名前が並び、それぞれに新しい物語がつづられる。
たとえば、北海道の「利尻山」は30代半ばで独身の希美(のぞみ)が二人姉妹の姉と登る。東京の外大を卒業後、実家で畑仕事を手伝いながら、細々と翻訳の仕事を続けているが、医者と結婚し1女をもうけた姉との関係は昔からしっくりきていない。
一方、長野、富山両県にまたがる「白馬岳」は希美の姉の視点でつづられる。娘と妹の3人で登りながら、夫との関係について自分の気持ちを整理し、答えを見いだしていく。
主人公の女性が別の物語では山小屋の寝床で隣同士になったり、ツアーの同行者になったりするなど随所に登場する。どの作品も著者の綿密な設計のもとで描かれていることが分かる。名山を越えて登場する女性たちに思いをはせながら読むのも面白い。
山頂を目指し、一歩前に進むたびに素直になっていく女性たち。さわやかな読後感に、本を閉じると山に登りたくなる。(唯)
−−「今週の本棚・新刊:『山女日記』=湊かなえ・著」、『毎日新聞』2014年09月14日(日)付。
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http://mainichi.jp/shimen/news/20140914ddm015070016000c.html