『凪のあすから』14話の演出を見る

貯まりに貯まっていた『凪のあすから』を最新18話まで視聴。
面白かったです。
演出的に引っ掛かったのは14話。
佐藤卓哉さんの絵コンテ回。


脚本:岡田麿里
絵コンテ:佐藤卓哉 演出:菅沼芙実彦
作画監督:川面恒介、大東百合恵、小島明日香、川口千里


以下、気になったところをごちゃごちゃと。



アバン。
大人になったちさきの初登場シーン。
なかなか顔を映さない、
お決まりの焦らし演出。
に加えて、日陰の暗い道で、空も極力映さず映さず……。

はいここで空煽りバーン!どうだ!という演出。


SEに注目してみると
ここまではずっとちさきが雪を踏む音だけできていたのが
ここでビューッという強い潮風の音が入る。
ポイントなのは、
背景の雲が平均的なものよりも高い位置に描かれているというところで、
まさに潮風が通り過ぎて天空へ吹きあがっていく感覚がある。
それ用にちゃんと背景が描かれているように感じる。
絵と音のイメージがばっちり合う快感。


Aパート。

病室には不自然なくらいの大きな大きな窓。
綺麗な景色をバックに、奥に抜ける絵が撮れるのが良いですな。

大きな窓は大きな光源になる。
映画などでは、窓は大きいに越したことないとかあるとか。
それとこれ、円窓なんですね。ユニーク。
和室なんかによくあるアレでしょうか?
凪あすでは畳とかよく出てきますが、
これも和のモチーフの一環?



車窓に映るちさき。
ガラスに映る自分は本心の自分。粋な演出。
トンネルを抜けると、

そこは雪国だった(違)。
ここ!というタイミングでパッと絵を変える。
視覚的な変化を与える。
ここまではよくある。
面白いのはこの次。

カメラが車内から車外へ。
ここで視覚的な変化に加えて、
「走行音」が車内のものから車外へと切り替わる。
これが良い。
音の変化を生みだしている。
音の変化は映像のテンポをつくる。
畳みかけるように「変化」を盛り込んでいく演出。



左右対称っぽい背景に、右側から歩いてくるちさき。
「左右対称」なのにはだいたい訳がある。

このように。
「真ん中」でぴたっと止まる。
そして、「真ん中」で振り向く。
わかりやすい。親切な絵の作り方をしている。




ここの構図はなんだか演劇っぽい。
さゆのポージングも大げさで演劇っぽい。
手前にある石囲いもステージっぽさを助長している。

そしてアングルが切り替わり、奥に抜ける絵へ。良い絵です。
この視覚的変化が良い。

加えて、先ほどの横並びの構図から縦の構図へと変化することで
二人の会話が核心に迫っていくことをそれとなく知らせている。
被写体と視聴者の距離感がぐっと縮まる瞬間を上手く演出で補っている。


Bパート。




紡の家では基本的にローアングル。
しっかりとアイレベルより低めにカメラを設置している。
畳部屋ではこうするのがやはり鉄板なのかな。
いわゆる小津安二郎のローアングル演出。
最近だと水曜どうでしょう演出などと言った方が通じるかもしれない。
あれ?そんなことないですか……。



ここの紡はほぼ顔の向き一つで芝居していく。






1,2,3,4と向きを変える。
台詞と合わせて見るとしっくりとくる。
余計な身振り手振りをせずとも顔の向きひとつで芝居できる。
それがアニメらしい(演出主導の)芝居付け。


ちなみに顔の向け方でいうと
長井龍雪さんが演出された新OPはまさにうってつけといいますか、
顔の向け方のすべてが詰まっているといってもいいくらい。
要チェックです。


そんな感じで。
『凪あす』14話の演出について思うところを書いてみました。
物語はいよいよ終盤。
今後の『凪あす』からも目が離せないです。