「知的生産のための道具」としての「はてなブックマーク」

CNET JapanからこちらにBlogを移行するときに、

自分がこれからBlogを長く続けていけるとしたらどういうタイプのBlogだろう、ということをずいぶん考えた。結論は、自分のとっての「知的生産のための道具」という意義に集約していった。

と書いたが、本欄で昨年12月以来ご紹介してきた「必読記事・論考(IT)」へのリンクの大半(今のところ700-800個の間)を、昨日かなりの時間をかけて、はてなブックマークに登録し、いろいろと実験を始めてみた。
今のところの結論:「知的生産のための道具」としてはまだ荒削りだし、そういう方向を極めるべくこの「はてなブックマーク」が発展していくのかどうかは未知数だが、とても大きな可能性を感じている。
「知的生産のための道具」なんて人によって色々だが、僕の場合は「自分がどこかでいつか読んだものを探す」ということに、これまで、思いの他、無駄な時間を使ってきた。そして、見つからないことが多く悔しい思いをしてきた。せっかく読んだのに、それが大切なときに引っ張り出せないなんて、と本当に悔しい。だからさらに時間を使って探す。それでも見つからない。そんなことを繰り返してきたから、この問題をどう解決するかは、僕にとって最も重要な「知的生産の道具」の条件なのだ。
読んだものの中であとでいつか参照したくなるかもしれないなというものが、僕の場合だいたい月に200から300くらいある。1日平均10個くらいだが、1年にすれば3,000前後。3年で10,000件に及ぶ。
経験則から言うと、自分の専門領域に関してのみ言えば、自分が実際にざっと読んで篩いにかけて選んだその3000件前後/年で増えていくデータベースから自由自在に必要なものを引っ張り出してくることができれば、ウェブの大海からGoogle検索するよりも、たいていは賢いアウトプットを出す。とりあえず今のところは。
ここにまず「はてなブックマーク」の大きな可能性を感じた。タグやらフォークソノミーとか色々なことが各所で今トライされているが、自分の曖昧な記憶を頼りに自分が一回読んだものを探すという作業の場合、重要なのはもっとシンプルなこと、つまり大雑把なテーマとか書いた人とか長文記事だったとか文中の印象に残る言葉や人名とか読んだ時期とか掲載誌・掲載サイトとか、そういうことだ。
たとえば「新しいタイプのブロードバンド・コンテンツの可能性とインパクトをRSSiPod現象やPoscastingとの関係で考える」みたいなテーマを持って考え事をしているときに、果たしてBitTorrentというものはどうその文脈に置いたらいいだろう、みたいなことを思ったとする。するとBitTorrentについての曖昧な記憶、「ああ1-2ヶ月前に、比較的メジャーな雑誌で相当長い特集記事がBitTorrentについて書かれていたなぁ」というふうに記憶がよみがえる。
この事例はかなり典型的だが、そういうときに、自分の「はてなブックマーク」に向かえば大抵は見つかるはずという自信が僕の中に生まれるとすれば、知的生産性は格段に向上することになる。
http://b.hatena.ne.jp/umedamochio/?word=bittorrent&cname=
は「BitTorrent」で検索した結果。
今のところブックマーク登録数が700-800と数が少ないから、シンプルなこの検索結果をざっと上から順に眺めることだけで、そうそう雑誌はWiredだったと思い出し、
http://www.wired.com/wired/archive/13.01/bittorrent.html
という記事が見つかる。そして、副次的に、へぇ、こんなにたくさん他の記事でもBitTorrentについて言及されていたのかと発見もできた。まだ「自信」とまではいかないが、読んだときにちょっとの手間で登録しておきさえすれば、かなり便利に使える「道具」になりそうである。
冒頭で「まだ荒削り」と書いたのは、ブックマーク登録数がもっともっと多くなった場合により重要になってくる検索機能や、登録時に「あとで必要になりそうな度合いが高い場合のマーク」みたいなことが入れられるとか、そういう細かい工夫がふんだんに入ってくると、より洗練された道具になると思うからである。
はてなブックマーク」がこれから注力していくのは、ソーシャル・ブックマーク的な機能を強化しての「新しい情報の発見と共有と伝播」に関わる方向性なのだろうと思う。自分の専門領域についての「情報のアンテナ」は相当磨いてきたつもりでも、やはりこれだけ爆発的に情報がネット上に溢れてくると、やはり「新しい情報の発見」には興味が尽きないから、そちらも大いに楽しみにしている。
ただ、その方向だけでなく、「知的生産の道具」「個人情報ツール」的な側面の充実にも目を向けてほしい。「道具」というのは、案外、開発者の意図とは違う使われ方をするケースも多いものだし、知的作業をする個人が「使える道具」と思えば登録されるブックマークはより充実し、それらが連携したときの価値も高まるに違いないからである。ところで、
http://b.hatena.ne.jp/jkondo/
はてな近藤社長のブックマークから、
http://d.hatena.ne.jp/yukatti/20050213/1108281115
を知る(こういう「情報の発見」の意味はもちろん大きいと思う)。この「香雪ジャーナル」の最後に書かれている「はてなブックマーク」への要望は、僕のものと非常に近い。

自分のブックマークページの登録エントリーの登録順を入れ替えたりソートしたり、といった「整理」が出来ると良いなと思った。今のままだと登録順にカオス化するだけなんだけど、見つけたまま思いつくままにブックマークにほうりこんでおいて、あとで似たページをまとめておきたい……と思ったりしたときにひとまとめにフォルダ化して整理できたりすると便利そうだ。はてなブックマークへの要望