My Life Between Silicon Valley and Japan このページをアンテナに追加 RSSフィード

2010-09-04

[] 「ウェブで学ぶ」という本を書いた背景について

私がこの本を書きたいと思った理由はただ一つ。

日本語圏のウェブ世界からはまったく見えない大変化が、世界では着実にしかも急激に起きていることを、皆さんに知ってほしかったからです。

本書共著者の飯吉透さんとは、彼がシリコンバレーカーネギー財団に勤めていた頃、お互い近所に住んでいたということもあり、『ウェブ進化論』以後のグローバルウェブ進化について、定期的に意見交換を続けてきました。

その過程で、日本人である彼が、アメリカグローバルオープンエデュケーションというムーブメントの中核にいて、その背景となる思想ばかりでなく、そこで実際に起きていることの詳細なリアリティを把握していることを、深く知るにいたりました。

この数年、飯吉さんがオープンエデュケーションの研究、普及、啓蒙仕事に邁進され拠点をMITに移す中、私は相変わらずシリコンバレーに住み、「グローバルウェブという補助線を引いてウェブ世界構造化しなおす」という思考実験を続けていました。

インターネットとはそもそもグローバルなものなのだ」という常識があります。しかし、その常識から離れて虚心にウェブ進化現実を眺めたとき、インターネットが広く人口全体に普及する段階においては、ローカル性がグローバル性を凌駕するのがむしろ自然だと考えるべきだろう。徹底的にグローバル志向するムーブメントのほうをこそ「特別なもの」と見る必要があるのではないか。次第にそう考えるようになりました。

シリコンバレーでもこの仮説に基づいて議論を続けてきたのですが、あるとき友人からこんなメールが届きました。

自然過程にゆだねるとローカルになるというのは、言われてみればその通りですね。シリコンバレーにいると、ついグローバル普通だと思ってしまいがちですが……」

私もまったく同じで、シリコンバレーに住んで一五年が過ぎ、ウェブ進化を「グローバル普通だと思ってしまいがち」な目で眺めていたことを再確認したのでした。

むしろ「自然過程にゆだねるとローカルになる」ウェブ進化において、それに抗してグローバル志向を貫くもの(グローバルウェブ)をこそ「特別なもの」と位置づける。そんな発想からウェブ進化を見つめなおした現段階での私の結論が、本書第一章の内容となっています。

次に、では私たち日本人がグローバルウェブ本質を考えるうえで最適な題材はいったい何だろうか。そんな問いを立てました。そのとき、飯吉さんの顔が頭に浮かんだのでした。

そうか、オープンエデュケーションの世界で起きている現実こそが、グローバルウェブ本質をよくあらわすものなのだと。

冒頭で「日本語圏のウェブ世界からはまったく見えない大変化」と書きましたが、「日本から見えない」ということ自身がまた、グローバルウェブ本質をよくあらわしているとも言えるのです。

本書は、飯吉さんのオープンエデュケーションに関する知識や経験から私自身が学んでいくプロセスを対話の形で公開するのはきっと価値が大きかろうと考えて、企画しました。・・・・・

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

まもなく、飯吉透氏との共著「ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命」」(ちくま新書)が発売されます。9月8日頃から書店店頭に並ぶことと思います。これは、私が書いた「おわりに」の一部で、本書を書いた背景の部分です。

三日ほど前に、この本の見本が五冊シリコンバレーに届きました。ちょうどシリコンバレー出張でやってきた友人に一冊進呈しました。「●●様 梅田望夫」と本にサインをするとき、通常、●●のところには贈る相手の名前を入れるわけですが、この本については、14歳になる彼のお嬢さん名前を入れました。本書は、一人でも多くの、これから学ぶ若い人たちに読んでほしいと思っている本だからです。子供向けに書いた本ではありませんが、学ぶ環境をこれから選ぶ十代の人たちにこそ、是非読んでほしいと思っています。

はじめに(飯吉透) 

第一章 ウェブ進化人生を増幅する(梅田望夫) 

人生を切り開いていくための強力な道具/「知の宝庫」たるウェブ/「師」や「同志」との出会い/職を得る、生計を立てる道筋へ/「経済ゲーム」と「知と情報ゲーム」/グーグル中国グローバル展開への強烈な意志/グローバルウェブを牽引する三つの力/グローバルウェブオープンエデュケーション  

第二章 オープンエデュケーションの現在(飯吉透)  

ウェブによって生まれ変わったオープンエデュケーション/オープンテクノロジーオープンコンテンツオープン・ナレッジ/ローカルからグローバルへ/オープンエデュケーションが続々と生み出す教育界の「ウェブスター」たち/カーネギーメロン大学の挑戦/初等・中等教育への浸透/「格差超越装置」としてのオープンエデュケーション/オバマ大統領の”オープンエデュケーション宣言”/「オープンテキストブック」による教科書無料化・低価格化/見え始めた「より開かれた二一世紀の大学」の新たな姿/牽引力としての民間財団存在社会的フィランソロピー精神教育の開化・深化・進化  /[コラム]メタ・ユニバーシティとクラウドカレッジ  

第三章 進化と発展の原動力  

「逆転の発想」から始まったMITオープンコースウェア/「互助精神」「フロンティア精神」「いたずら心」「宗教的信念」/「カリフォルニアン・イデオロギー」と「東部エスタブリッシュメント的なもの」/オープンエデュケーションは独善的?/ヨーロッパにおけるオープンエデュケーション/授業料無料グローバルインターネット大学/個人の「狂気」がブレイクスルーを生む/成長段階仮説/オバマ政権オープンエデュケーション/営利オンライン大学国内格差の解消、グローバル格差の解消/オープンリサーチオープンサイエンス進化する教科書オープンテキストブック/初等・中等教育でも始まったオープンテキスト化/ビジネスサイドからの新しい教科書出版の動き/[コラム]クリエイティブ・コモンズオープンエデュケーション

第四章 学びと教えを分解する  

オープンコースウェアは誰がどのように使っているか/アメリカ大学と「閉じ込めのシステム」/独習者はどのように学んでいるか/[コラム]オープンコースウェアで学んだ土谷大さん/教育と「強制システム」/ウェブと能動性/「テクノロジー」「ナレッジ」がなぜ必要か/「師」や「同志」とどのように出会えるか/学習コミュニティ/学びから職へ/専門的な知識を生かして社会貢献する/セーフティーネットとしてのオープンエデュケーション/[コラム]アルゼンチン地方から世界へ:サンルイスデジタル構想  

第五章 オープンエデュケーションと日本人、そして未来へ  

「残りのすべての人々のため」の教育?/英語圏と非英語圏で違いはあるか/ロングテール化する教育日本でのオープンエデュケーションの萌芽/「英語で学ぶ」ために「英語を学ぶ」/キャッチアップ型の学びを超えて/グローバルプラットフォーム進化がもたらしたインパクト/享受者としてのデジタルネイティブたち/予測不能な未来を生きるために  

おわりに(梅田望夫) 

2010-08-11

[][] まもなく二冊、本が出ます。一冊は紙の本、一冊は電子書籍(iPad, iPhone向け)

サバティカルが明け、まもなく二冊、本が出ます。

紙の本のほうは「ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命」(ちくま新書、飯吉透氏との共著)で、9月8日発売です。

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)

最近「ビル・ゲイツ曰く「5年以内に最上の教育はウェブからもたらされるようになる」」という記事が話題になっていましたが、まさにそのあたりをテーマとした日本で初めての本だと思います。この分野の第一人者である飯吉透氏と共著で書きました。お楽しみに。

はじめに(飯吉透) 

第一章 ウェブ進化人生を増幅する(梅田望夫) 

人生を切り開いていくための強力な道具/「知の宝庫」たるウェブ/「師」や「同志」との出会い/職を得る、生計を立てる道筋へ/「経済ゲーム」と「知と情報ゲーム」/グーグル中国グローバル展開への強烈な意志/グローバルウェブを牽引する三つの力/グローバルウェブオープンエデュケーション  

第二章 オープンエデュケーションの現在(飯吉透)  

ウェブによって生まれ変わったオープンエデュケーション/オープンテクノロジーオープンコンテンツオープン・ナレッジ/ローカルからグローバルへ/オープンエデュケーションが続々と生み出す教育界の「ウェブスター」たち/カーネギーメロン大学の挑戦/初等・中等教育への浸透/「格差超越装置」としてのオープンエデュケーション/オバマ大統領の”オープンエデュケーション宣言”/「オープンテキストブック」による教科書無料化・低価格化/見え始めた「より開かれた二一世紀の大学」の新たな姿/牽引力としての民間財団存在社会的フィランソロピー精神教育の開化・深化・進化  /[コラム]メタ・ユニバーシティとクラウドカレッジ  

第三章 進化と発展の原動力  

「逆転の発想」から始まったMITオープンコースウェア/「互助精神」「フロンティア精神」「いたずら心」「宗教的信念」/「カリフォルニアン・イデオロギー」と「東部エスタブリッシュメント的なもの」/オープンエデュケーションは独善的?/ヨーロッパにおけるオープンエデュケーション/授業料無料グローバルインターネット大学/個人の「狂気」がブレイクスルーを生む/成長段階仮説/オバマ政権オープンエデュケーション/営利オンライン大学国内格差の解消、グローバル格差の解消/オープンリサーチオープンサイエンス進化する教科書オープンテキストブック/初等・中等教育でも始まったオープンテキスト化/ビジネスサイドからの新しい教科書出版の動き/[コラム]クリエイティブ・コモンズオープンエデュケーション

第四章 学びと教えを分解する  

オープンコースウェアは誰がどのように使っているか/アメリカ大学と「閉じ込めのシステム」/独習者はどのように学んでいるか/[コラム]オープンコースウェアで学んだ土谷大さん/教育と「強制システム」/ウェブと能動性/「テクノロジー」「ナレッジ」がなぜ必要か/「師」や「同志」とどのように出会えるか/学習コミュニティ/学びから職へ/専門的な知識を生かして社会貢献する/セーフティーネットとしてのオープンエデュケーション/[コラム]アルゼンチン地方から世界へ:サンルイスデジタル構想  

第五章 オープンエデュケーションと日本人、そして未来へ  

「残りのすべての人々のため」の教育?/英語圏と非英語圏で違いはあるか/ロングテール化する教育日本でのオープンエデュケーションの萌芽/「英語で学ぶ」ために「英語を学ぶ」/キャッチアップ型の学びを超えて/グローバルプラットフォーム進化がもたらしたインパクト/享受者としてのデジタルネイティブたち/予測不能な未来を生きるために  

おわりに(梅田望夫) 

電子書籍のほうは、「iPadがやってきたから、もう一度ウェブの話をしよう」(産経新聞出版)。ただいまアップル社の検閲審査を受けている段階とのこと。中身はもうすっかりできあがっているのですが、アップル社からのゴーサインを待っての発売となります。

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特に、「巻頭特別収録「増える往復書簡」アップルグーグル未来――書簡ゲスト 中島聡氏」はボリュームたっぷりである上、発売後も読者からの質問を受けて「増えて」いきます。発売が決まったら、改めてご案内します。