福智山系縦走:11月13日〜14日(曇り晴れ)

祖母傾縦走へ向け、トレーニングも兼ねて福智山系を縦走してきた。皿倉山〜尺岳〜福智山〜牛斬山〜香春岳(三ノ岳)まで約30kmのロングコースだ。webを見ていると、一日で縦走しているハイカー(ランナー)も多いようだが、今回はテント泊縦走の練習なので、福智山直下の山小屋(荒宿荘)前でテント泊をする一泊二日の行程とした。今回は、食料もフリーズドライのものを主とし、前回の縦走時よりも荷の重さは2〜3キロ減った。


11月13日(曇り)

7:15 八幡駅 − 7:45 帆柱稲荷神社(国見岩コース登山口) − 9:05 皿倉山 − 9:45 権現山 − 10:35 市の瀬峠
− 12:40 観音越:昼食 − 15:00 尺岳 − 16:00 豊前越 − 16:40 烏落 − 17:00 山小屋(荒宿荘):テント泊
八幡駅から皿倉山登山口までタクシーに乗ろうと考えていたが、現地に来て見ると、皿倉山の麓までさほど遠くはなさそうだったので、歩いていくことにした。住宅街を抜け、高速道路の上にかかる橋を越えると、帆柱ケーブルの駅舎が見えた。事前に調べておいた国見岩コースを行くつもりだったので、駅舎へは向かわず左手の住宅街に入る。ほどなく帆柱稲荷神社の参道に入る。長い階段を登りきると朱塗りの柱が美しい社殿へ辿り着いた。社殿左より国見岩コースに入る。


朝の雑木林は気持ちがいい。国見岩コースは人通りが少ないのためか、想像していたよりも手が入りすぎておらず良い道だった。迂回路を横切る直登ルートを進む。減量化したとはいえ、やはりテント泊装備は重い。途中、ストックの故障などトラブルがあったため、皿倉山頂まで1時間以上かかってしまった。山頂はテレビ塔だらけで、見るべきものはないが、「九州自然歩道」の基点となる石碑は興味深かった。今まで散々利用してきた道はここから始まっていたのだ。北側には小倉の街並みが見渡せ、南側にはこれから向かう福智山へ至る山々が見渡せた。福智山とおぼしき山容がはるかかなたに見える。皿倉に登った達成感を味わえたので、もう終わっても良いかなと一瞬思う。


皿倉山頂の自販機で水を1L購入し、持参のボトルに移して出発。公園のような山頂の施設を通り抜け、一応縦走路上にある権現山を目指す。舗装路をてくてく歩き山頂に着く。権現山までの舗装路歩きで結構疲れてしまった。迂回しても良かったかな。権現山頂から九州自然歩道までのショートカットの下りは、道なき急斜面で、縦走開始早々面食らってしまう。九州自然歩道に入ってから、市の瀬峠までの下りも、脊振などのそれとはちがい、本当に「自然」な感じで良かった。落ち葉で覆われた急斜面を下っているうちに新しく卸したウールの靴下のズレが気になり始める。


市の瀬峠の四阿で靴下交換。いつもの使い慣れた厚手の化繊靴下に履き替える。峠の車道を少し左側に進み、カーブを曲がり込んだところに縦走路の続きがあった。ここから観音越までの道は、小ピークを登り下りをくり返す単調な道だ。ただ植林帯がほとんど無いので、日差しは少なかったが、暗い気持ちにはならなかった。ザックの重みで早くも肩が痛くなる。頻繁に休憩。腰ハーネスの調整をし、幾分肩への加重が減る。二、三人のハイカー、ランナーとすれ違う。昼を大分過ぎて観音越に到着。予想していたよりも狭く暗い場所だった。おまけにじめじめしていてあまり長居したくない。朝コンビニで買ったおにぎりとパンでさっさと昼食をすます。


観音越から尺岳の間は、今回の全行程のなかで一番きつく感じた。相変わらず小ピークの登り下り、加えて、田代分れというポイントから尺岳平までの間は植林帯の暗いパートもあり、体力的精神的に疲れた。15時前にようやく尺岳平に到着。テントが15張りぐらいできそうな広い場所だ。焚き火の跡もある。水場さえあれば絶好のテント場だろう。尺岳平にザックをデポし、尺岳山頂に寄る。山頂には大きな岩の上に祠があり、そこからの見晴らしは良かった。一瞬方角が分からなくなったが、これから行く福智山が確認できた。結構遠くて気が沈む。尺岳平に戻り、テント泊予定地の水場が枯れていた時の備えとして、皿倉山で補充した水の半分に、粉末ポカリを投入した。これで、山小屋付近にあるという「たぬき水」が枯れていたら下山せざるをえない。


尺岳平を出発した時点で15時を過ぎていたので、写真を撮るのも控え、先を急ぐ。幸いここからはアップダウンのほとんどない平坦な道だった。豊前越で一回休憩し、延々続いた展望のない樹林帯を抜けると、烏落と呼ばれる広場に出た。目の前には福智山が聳えている。ここからの登りは、斜度もきつく岩がゴロゴロしていて歩きにくいが、目的地の山小屋が近いためかそれほどきつくは感じなかった。10分ほどで、「たぬき水」に到着。塩ビのパイプからは勢いよく水が流れている。これで日暮の山道を下山しなくてもすみそうだ。思わず手ですくった水をがぶ飲みする。濁りもゴミも匂いもなく美味しい。持参したボトル全てを水で満たし、すぐ隣の山小屋へ向かう。


山小屋は予想より大きく、隣にはバイオトイレもある。日曜の夜なので当然だれも居ない。山小屋前のベンチとテーブルのある狭いスペースにテントを張ることにした。テントは張れてもせいぜい3つぐらいか。まあ、山小屋もあるし、わざわざここでテント泊する人はほとんど居ないだろうが。テントを設営し、ストーブで湯を沸かし粉末紅茶を飲む。北側には今日歩いてきた山々が見える。結構頑張ったなあ。南側は福智山の山頂。空身で行って帰ろうかと思ったが、頂からの眺めは明日の朝にとっておこう。


寒くなってきたので、テント前室で湯を沸かし、アルファ米をもどし、フリーズドライのカレーをかけて食べる。不味くはないがやはり味気ない。ウィンナーでも炒めたら美味いだろうなあ。天気予報を聴くためラジオをつける。祖母山麓ではろくに受信できなかった安物ラジオだが、ここは街に近いためか感度良好。テントからは街の明かりも見える。こんなに街に近いテント場も何だか不思議だ。天気予報によれば明日は晴れるそうだ。ラジオで日本シリーズを聴いたりしながらうとうとする。ゲームの行方を知らぬまま就寝。



11月14日(曇り晴れ)

7:20 山小屋(荒宿荘) − 7:35 福智山 − 8:15 頂吉分れ − 9:25 焼立山 − 11:05 牛斬山 − 12:20 五徳越峠
− 13:30 香春岳(三ノ岳):昼食 − 15:20 採銅所駅


5時起床。とりあえずコーヒーを入れる。寒いのでセーターと薄手のダウンを着る。朝が一番寒い。ラジオでホークス敗戦を知る。後半弱いなあ。荷物の整理やらテント撤収やらをしていたらあっという間に7時になる。水場で水補給をし、出発。一晩寝たので体が軽い。15分ほどで福智山山頂着。巨岩がゴロゴロあって意外と広い。風が強く寒いので、写真を撮って先を急ぐ。やや方角がわからなくなり、西の鷹取山方面に少し下ってしまう。山頂に登り返して、方位盤を確認し縦走路を進む。広い山頂で下山ルートが沢山あるところは案外迷いやすいのかも。コンパスを出せばいいだけの話だが。


まわりの風景は昨日とは異なり、ススキ原で見通しがいい。ススキ原の一本道をすいすい進む。ひとつ小ピークを越えた辺りから、ススキ以外の樹木も増えてきた。植生がだんだん多様になっていく過程が面白い。頂吉(かぐめよし)分岐までは、高低差もほとんどなく、明るい潅木のなかを進む道でとても気に入った。頂吉分岐からは背の高いススキなどの草木で道が覆われていて、若干の藪こぎを強いられる。朝露でぬれた草木のせいで、ズボンと靴が濡れた。


藪こぎ地帯を過ぎると、西側が人工林で東側が自然林となり、その境界の下草を刈られた防火帯の真ん中を進むことになる。赤牟田の辻というピーク手前の鞍部では、自然林が伐採され、その倒木で道がふさがれていた。テープをたよりに少し迂回。『山と高原地図』に「胸突八丁の急斜面」と記載されている急坂を登る。確かに斜度はきついが、ジグザグに登ればそれほどでもなかった。赤牟田の辻では道標を確認しただけで、休憩無しで先に進む。


最初はものめずらしかった防火帯歩きも、風景が単調でつまらなくなってくる。陽も照りだし、若干暑い。夏場だと日陰のない防火帯歩きはきついだろうなあ。赤牟田の辻から15分ほどで焼立山到着。四方に視界も開けていて気持ちがよいので、しばらく休憩。南西方向には福智町が見渡せる。霞んでいなかったら英彦山あたりまで十分見えるのだろうなあ。休憩を終え、次のポイントである牛斬山を目指す。単調な防火帯につけられた細い道ひたすら進む。小ピークの連続でなかなかこたえる。途中、「山犬の峠」という所で休憩する。犬が来たら嫌だな。逃げる気力もない。


採銅所駅への分岐を過ぎ、11時頃、牛斬山到着。山頂付近は藪が濃く、大きいザックを背負っていると進みにくかった。山頂からは香春岳の三峰がよく見えた。もっとも一ノ岳はセメント原料の石灰石採掘のため半分以下に削られていて無残な姿をしているが。山頂を後にし、先ほどの分岐まで戻り、五徳越峠方面に進む。福智山系縦走をする人たちは、牛斬山を最後(最初)の山とし採銅所駅をゴール(スタート)とするケースが多いようだ。ただ、目の前に香春岳(三ノ岳)の鋭鋒が聳えているわけなので、一応登ってみることにした。


牛斬山からの道で今日始めての登山客(中高年夫婦)とすれ違う。皿倉から来たと言うと驚かれた。言うつもりもなかったが、尋ねられたので。五徳越峠には車が二台止まっていた。一台は先ほどの夫婦のものだろう。峠で一服し、三ノ岳への登山口につながる道に入る。「岩登り」と「ファミリー」コースがあり、どちらに行くか相当迷う。荷物をデポしても良かったが、ザックに昼食の材料が入っており、仕分けするのが面倒なのでそのまま登り始めてしまった。


しばらく進むと「岩登り」と「ファミリー」コースの分岐点に着いた。祖母傾縦走では、テント泊装備で岩登りという状況もあり得ると考え、トレーニングのため「岩登り」コースを選択。しばらくすると大きな岩場の基部についた。赤スプレーで岩に矢印があるが、取り付きから苦労する。ストックが邪魔なのでザックに縛り付ける。両手両足を使っての岩登りだ。岩には樹木が茂り所々にロープもあるので、手がかりには困らないが、荷物で体がふられると若干怖い。


テントマットを丸めてザックの表面に括りつけていたので、時々、岩や木にマットが引っかかり進めなくなる。そのたびに体をひねって切り抜ける。やっぱり空身の方がよかった。しかし一旦登った岩場を下りることの方が困難なため、何とか登るしかない。高度が上がると、焼立山や二ノ岳、一ノ岳がよく見え、気分はいい。しばらく岩登りをすると広めのテラスに出た。ザックを置いて休憩。テントも張れそうな大きいテラス。水があればテント泊もありかな、などとエクストリームな考えが頭をよぎる。


基部からずっと岩登り(といっても器具が必要なクライミングルートではないが)を続け、ようやく山頂部に出る。岩でこすれて両手の皮がかさかさだ。山頂部も岩だらけで、なかなか平地にでない。まな板を立てたような岩をいくつか乗り越え、やっと標識のある広場に出た。広場の横でシートを広げ横になる。このまま眠れそうだ。湯を沸かしてラーメンを作ろうと思ったが、面倒くさいので、残っていてた菓子パンで昼飯をすます。20分ほど休憩し、下りは迷うことなくファミリーコースを選択。林道を経由し五徳越峠に戻る。採銅所駅まで一時間ほど車道を歩き、15:40の日田彦山線普通電車小倉行きに乗り帰途へついた。


歩行距離:一日目18.4Km、二日目13.7Km