◆ 最後の希望

ようやく富士ミス応募原稿とゲーム製作にとりかかる状況になってきて心が軽くなっている海獺です。まあ、今年最後の希望として書き始めていた富士ミスは、あきらめようかなとも思ってしまいますが。
ふと思い出しましたが、一週間ほど前の授業で教授が本を読んでいる人はいるかという問いかけがありました。もちろん私は読んでいると言う意味をこめて手を挙げたわけですが、「じゃ、この中で机の上で読んでいる人?」みたいなことを言われて、ちょいと驚きました。二日に一冊ぐらいのペースでは読んでるんですが、机の上で読んでたことはないんですよね。電車の中とか、ベットの上とか。それでどうしたという話ではありませんが、なんとなく印象に残ってるのですよ。
さてさて、思い返してみると今月は演劇を二つも見に行ってました。先月の末にも歌舞伎を見に行っていますし。その前にも劇を見に行ってます。何気に今年に入ってから演劇を見るようになりました。


光原百合最後の願い』光文社,2005 Amazon


新しく立ち上げる劇団の団長役を務める度会恭平。度会が劇団メンバーを集めようと動き回るたびに、謎までも呼び寄せてしまうお話。日常の謎に満ちた7つの短編で構成されています。まあ、度会の視点で語られることはありませんが。
物書きの響子が、所属している文芸サークルの記念パーティで、さだまさしさんの歌になぞらえた行動を目の辺りにしたことから転がり始める。「花をちぎれないほど…」
気配りがきく志郎は、そこを買われてサークルでの飲み会の場所などを手配していた。そんな中、自分を含め周囲では不思議な出来事が続出していることを知る。「彼女の求めるものは…」
デザイン事務所を開いていた橘のところに、犬猿の仲だった男の妻がやってくる。「最後の言葉は…」
喫茶店のウエイトレスをしながら役者をしていた遼子は、誘いに来た度会に子供のころの話を聞かせる。それは小学校のあるイベントに関するもので。「風船が割れたとき…」
古く大きな屋敷に一人で住んでいた愛美は、屋敷を舞台の資料として見学させて欲しいと頼んできた劇団メンバーのカザミに、屋敷にまつわるのろいの話を語り始める。「写真に写ったものは…」
不慮の事故でなくなってしまった青年が伝えたかったこととは?「彼が求めたものは…」
旗揚げ公演を行う劇場は寂れたところだった。そこの管理人であるタクヤには、心の奥底に秘めた出来事があった。「…そして、開幕」
一話目が一番私の好みでした。なにより響子がいい性格してます。きっぷがいいというんでしょうか。探偵役は度会なのですが、落語家とか占い師の探偵は見ましたが、役者ってのもなかなか面白いです。劇団について基礎的なことも知らないので、劇団に必要な最低人数が二人だとか、専門用語とかも新鮮で興味深かったです。
橘の芸術にかける思いとか、カザミの悲しすぎる報われない話とかもなかなか。どちらの話も、最後の男二人の会話が染みます。真実がもっとぐろかったり、逆に優しさに満ちていたり色んなものが詰まっていました。
二話目は六話目に関連してましたし、それ以外にも七話目はすべての事件をなぞらえるような大団円で終わります。面白い。