甲田学人夜魔メディアワークス,2005


Missingシリーズの作者・甲田さんの初単行本作品。内容は「夜色の外套を羽織った神野陰之を巡る恐怖体験」連作短編集。五つの短編にエピローグといった感じ。
Missingを読んでなくても十分楽しめると思います。むしろ、Missingを読んでないかたにお勧めしたいです。書き方とかも微妙に違った印象です。
まずは第7回電撃ゲーム小説大賞で最終選考に残った作品(しかも長編ではなく短編で)「罪科釣人奇譚」釣りをする男がある少女と出会った所から物語は始まります。怪奇現象というべきななんというべきか……。ホラーって私は書くの難しいと思うのですが、甲田さんの表現はうまいと思います。名前だけは知っていて読みたいと思っていた作品がようやく読めましたよ。
続いて「繕異奇譚」あるお店に入って娘のために手に入れたぬいぐるみにまつわる話。小さいころから愛着を持っていたぬいぐるみを、捨てたくなるほど気味が悪くなる状況がすごいです。何が起こってるのか分からないのって恐怖の原点だと思います。
三つ目は「魂蟲奇譚」人は体の中に昆虫を飼っているという話。これは雑誌で読んでいたので斜め読みしようと考えていましたが、やっぱり普通に読んじゃいました。まあ、最初からグロキモさが抜群です。それでも、最後は綺麗な終わり方なんでしょうかね?
次も既読「薄刃奇譚」いじめられっこがリストカットをしていてついには死のまぎわに……。なんつうか、物理的に怖いです。想像しやすい痛さですから。
これも読んでました。「魄線奇譚」子供のころによくやる、白線以外は歩いちゃいけないぞ、という遊びから恐怖が開始されます。つたない横断歩道という単語が妙に心に残りました。
シリーズじゃないからキャラ性が薄れる分、未知なものを見る恐怖が増えてます。先が読めないのがホラーの条件だとなんとなく思いました。ちなみに文章調はきれいです。怖いのにきれいな幻想譚・怪奇談・奇譚が揃ってます。


この小説が好きな人にお勧めする③
③ Q&A② フランケンシュタイン①  Missing
①デビュー作。甲田学人さんの『Missing』十三巻で完結です。→感想
②ホラー小説の原典ともいえる作品。メアリ・シェリーの『フランケンシュタイン』SFの元祖でも。→感想
③ホラーのようなミステリのような作品。恩田陸さんの『Q&A』全部がQ&A形式で進みます。→感想