乙一ZOO集英社,2003


書き下ろし1作を含む短編10作が入っています。黒いのも白いのもメフィスト色も。本当にバラエティーに富んだ構成で、色んな乙一さんを見ることができるのも魅力。中にはオチが読める作品もあったけれども、オチが読めるかどうかは二の次な感じでした。わりと思いつきそうなネタでもらしさがあるといいいますか……。とにかく面白かったのですよーと。以下、各作品について。
「カザリとヨーコ」灰色な感じの作品。最初はどこまで黒くなるのか気になっていましたが^^微妙なこねたが飛び出してくるのもいいですよね。
「血液を探せ!」赤色な作品。まあ、血液なので。一応ミステリ的な作品ではあります。コメディ的な力も持っていて幅が広いなと思います。
「陽だまりの詩」なかなかに白い作品です。コテコテのネタなんだけど演出に魅せられました。
「SO-far そ・ふぁー」家族の物語。どんな展開がされるのか分からない面白さがありました。最後の一文にちょっとばかりやられたのは内緒です。
「冷たい森の白い家」読み終わる前はぬいさんがでてくる「BLUE」みたいなのを想像していたんですが……。私は後味悪いなと思いました。人によっては違うかも。
「Closet」思いっきりはまってしまった。クローゼットの中に死体を隠すはなしです。そっち方面から攻められるとは思っても見なかったのですよ。
「神の言葉」は以前読んだので割愛。
「ZOO」表題作。う〜ん、初出が「異形コレクション」なのもうなずけます。実感のない気持ち悪さが溜まりに溜まるけれども、最後は……ってのが救いですかね。救いになってないような? 題名からは白い感じがしてたんですけどね。
「SEVEN ROOMS」この中ではわりとゲーム的な仕上がりの作品。冒険ちっくといいますか。謎を解決するのみに集中するのも味わいがあります。なんとなくフリーのフラッシュゲーム「百鬼夜行」(→関連)を思い出しました。シュチュエーションはぜんぜん違いますが。
「落ちる飛行機の中で」飛行機を舞台にした、これまた人を食ったような話。この中でも結構好みの作品です。おいしく読ませていただきました。
乙一さんの作品はどれもミステリ的な仕掛けがはってあって楽しいです。あと、書くものの幅が広いから何が飛び出してくるか分からず、飽きることがないのもいいですよね。色んなものを書けるってのは、ものすごく強みだと思います。
この「ZOO」も映画化されましたが、「暗いところで待ち合わせ」も今年公開されるようですね。主演は田中麗奈さん。


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