鬱っていうより奇妙な印象シリアスxダーク


エリック・マコーマック隠し部屋を査察して (創元推理文庫)東京創元社,2006   類似検索


短い二十個の話が収められている本。ショートショートみたいなものかと思っていましたが、特にオチのないものが多かったです。グロテスクで残酷な描写も多々あるのですが、鬱な気分にはなりません。一歩離れた立場から眺めているからでしょうか。共感するタイプの本ではないと思いました。冷静に歪みを観察する雰囲気に近いかな〜。
最初の物語であり表題作「隠し部屋を査察して」からしてその傾向は顕著。不思議な習性やら思考を持つ六人が一人一人並べられて、特に事件が起きるわけでもないまま幕は閉じられます。他の物語も、変な慣習やら不気味な世界観を背景に描かれるものがほとんどなので、読み終わったあとに私は船酔いしたような感じになりました。なんとなく落ち着かない。地に足が着いているようなエンタメ小説ばかり読んでいた弊害でしょうか? この中では分かりやすい、「パタゴニアの悲しい物語」と「一本足の男たち」、「刈り跡」の三つがわりと好きです。