信州の”スローフード・おやき”

 信州の”おやき”は、野沢菜漬けとおなじように今や全国的に有名となり、海外へ進出したとかしないという話もあるこの頃である。また先の長野オリンピックで信州のおやきを味わってファンになった人も各国の選手団の中にいるのでは。このおやき、信州を代表する伝統の郷土食、また貴重な観光資源にもなっているが、長く北信(北部)地域で作られきたものが、昭和期、全県に広まったものである。

 信州の各市町村がその物産を持ち寄るイベント市が毎年、松本で開かれている。そこでもむろんおやきも登場。町々村々でみな、おやきの製法等が異なって面白い。昔ながら各地で作られたという麦焼き餅、ソバ焼き餅も分類すればおやきなのだろう。「戦前・戦後における郷土食おやきの変容と食生活」の著者である食品栄養学の三田コトさんによれば、日経新聞に、「信州のおやき」・愛情こめた「スローフード」と紹介されたことがあったとのこと。地域で採れる食材をおいしくつくる工夫をし手間を惜しまず作られてきた郷土食おやきが良い記事で全国版に載って良かったと喜ぶ。

 三田さんによれば、この種の食べものは、名前こそ違え昔から全国にあったといい、その食べもの”おやき”が生き残った県が信州だというのである。切り干し大根のおやき、鉄火ナスのおやき、丸ナス輪切りのおやきなど、実にユニークでおいしく好きだ。おやきは、昭和58年、長野県選択無形民俗文化財の「味の文化財」のひとつとして指定されている。