日刊ゲンダイ ムルアカ氏インタビュー

鈴木宗男代議士の後ろを悠然と歩く“謎の私設秘書”――。本日登場するのは209センチ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)出身のジョン・ムウェテ・ムルアカさん(52)だ。02年、政界を揺るがした「ムネオ疑惑」の巻き添えを食い、すべての仕事を失った。今どうしているのか。
「07年からは神奈川工科大学の特任教授を、それと09年から千葉科学大学の教授を務めてます。自給自足の生活を余儀なくされてた頃と比べれば、毎日の暮らしは安定しました」
赤坂にある事務所で会ったムルアカさん、まずはこう言った。長〜い脚といい、見上げるような大男だ。
「ワタシが教授になることに、両大学とも根強い反対があったそうです。それを押し切って現在のポジションを与えてくれた神奈川工科大の中部理事長、千葉科学大の加計理事長にはどんなに感謝してもしきれません。授業? 神奈川工科大では国際関係論を教えてます。国際政治評論家として月に数回、講演活動もしてますし」
ムルアカさんは旧ザイール国営放送に勤務後、85年に来日。93年、東京電機大学電子工学科を卒業し、同大学で工学博士の資格と高校教員免許を取得した。
「銚子にある千葉科学大では生命工学などの授業を持ってます。週に1度、神奈川県小田原市の自宅から新幹線と在来特急を乗り継いで通ってるんですが、往復約6時間くらいかかるでしょうか。学生の熱意と勤勉さを見れば、このくらい何ともないですよ。授業の準備をばっちりやって臨み、学生の期待に応えるように心がけてます」
さて、ムルアカさんといえば、やっぱり鈴木宗男元代議士の名前が反射的に浮かぶ。
「宗男さんとはワタシが主催したアフリカの勉強会で知り合いました。アフリカについて正しい認識を持っていただきたいと、勉強会を開き、国会議員の方に声をかけたんです。でも、出席すると返事しながら、来ない人が多かった。そんな中、宗男さんはその日、北海道にいても飛行機で上京して勉強会に出席し、とんぼ返りで北海道に帰るんです。その信義の厚さに感激して交誼が深まり、いろいろ仕事をお手伝いするようになりました」
02年、ムネオ疑惑が吹き荒れ、私設秘書だったムルアカさんも巻き込まれた。
「ワタシは旧ザイール国営放送などの取材経験から、宗男さんを巡る騒ぎは外交の現場での権力争いや妬み、嫉みの一種だと見ていたんですが……。しかし、宗男さんが逮捕されると、日本のメディアは逮捕した側が発表した内容を伝えるだけで、その信憑性を一切検証しない。あれには心底、驚きました。ワタシもすべての仕事を失い、当時の川口順子外務大臣から、ムルアカ氏は偽造パスポートを所持している、とウソをいわれ、そのまま報道された。それが誤報だとわかっても何の謝罪もなく、今もワタシが偽造パスポートを持ってると信じてる人が多いのではないでしょうか」
当時から小田原の一軒家に日本人妻と2男2女と暮らしていたムルアカさんは収入の道を断たれた。
「それだけじゃありません。名誉も傷つけられたんです。普通なら自殺しても不思議ではないところでしたが、家族もいて、そんなことはできない。畑で野菜を作り、近所の方に駆除された鹿の肉を分けていただいて、家族6人、食いつないでいました。そうした状態が3年ほど続きましたね」
05年に日本国籍を取得、「ムウェテ武流阿加」になった。
「これからも日本とアフリカの関係強化を図ることが自分の役目だと思ってます。そのために全力を尽くしますよ」
鈴木元代議士とは今でも時々、電話で話をしているそうだ。<<