王朝貴族の悪だくみ―清少納言、危機一髪作者: 繁田信一出版社/メーカー: 柏書房発売日: 2007/04/01メディア: 単行本 クリック: 4回この商品を含むブログ (11件) を見る 

前著『殴り合う貴族たち』と同じく藤原実資の日記『小右記』などが元ネタ。
前著の方が、登場する人物がメジャーだったのでおもしろかった。道長の子供とかね。
それに対してこちらは、主に受領たちをメインにしたエピソードが語られている。
地方に赴任した受領たちと地元の豪族との間に起こったいざこざが朝廷に持ち込まれると、『小右記』なんかにも記録されるわけですね。
いざこざの主な原因は、受領たちがその地方でやりたい放題やるから。やりたい放題私腹をこやす。紫式部なんかの伝記には、「父親がやっと受領になった。受領はかなり実入りのいい仕事だ」などと、ほんとうにかるーく触れられている。しかし、その「実入りのいい」の実態はかなり阿漕なもの。
勝手に税金を取るとか、勝手に税金を増やす、課税対象でないものにも課税する、貧民救済や災害対策のための蓄えを自分のものにする、むりやり貸し付けて利息をくわえて回収等々。
そう言ったことがばれそうになると、秘密を知る豪族を一家皆殺し。
源氏物語』などの優雅さとはかけ離れた欲望と暴力の渦巻く世界。
ざっと流し読みにしただけなので、細かいことは読むそばから忘れてるんだけど、全体の印象としては
「武士の時代の萌芽が、すでに宮廷文化の最盛期にはあったのだな」ということ。
受領たちも、対抗する豪族たちもともにかなりな武力を持っていたようだから。