特定行政庁に国家賠償法上の被告適格を認めたものでございます

第164回国会 本会議 第32号(平成18年5月25日(木曜日))

  1. 建築確認検査は、民間確認検査機関が行ったものも含めて地方公共団体の事務であることは、昨年六月の最高裁判決でも明らかです。

第164回国会 国土交通委員会 第22号(平成18年5月23日(火曜日))

  1. 建築基準法六条あるいは最高裁判例等々で、最終的に、民間確認検査機関が建築確認を出したとしても自治体の責任になるということであります
  2. 民間確認検査機関が最後の建築確認を出したとしても、これは昨年の最高裁の判決で、横浜市の例でございましたとおり、最高裁の判決では、横浜市の区域内にある建物に対して、民間確認検査機関が建築確認をおろした案件であっても、最終責任は横浜市にある
  3. 今現在、最後の確認済証の発行は、一から十まで民間確認検査機関が、検査済証の発行も最終的には民間確認検査機関が出している。しかし、最高裁判例等では行政にその責任があるということで、実態と責任が非常に乖離している
  4. 最高裁の決定及び横浜地裁の決定で、民間の指定確認検査機関の確認事務は地方自治体の事務であるということで、幾ら検査機関は民間として設置しても、それはやはり法的には特定行政機関の地方自治体の責任ですよといういわば決定が相次いで出たわけであります。
  5. ○山本政府参考人 御指摘いただきましたのは、民間確認機関が行った確認検査に問題があった場合に、それについての損害を賠償する訴訟の相手方に、当該建築確認が行われる、本来であれば建築主事が行ったとした場合の特定行政庁に被告適格があるかどうかということについての最高裁の小法廷の決定でございます。これは、今の建築基準法の体系、その中における建築確認の事務、建築主事と民間確認機関の仕事の役割分担、それを前提にしますと、小法廷の決定はやむを得ないものと私どもは受けとめております。

第163回国会 国土交通委員会 第12号(平成17年12月21日(水曜日))
○山本政府参考人 平成十年の建築基準法の改正で、従来建築主事が行っておりました建築確認の事務を民間の指定確認検査機関においてもこれを担わせるという改正をいたしました際に、指定確認検査機関につきましては、二つ以上の都道府県の区域においてこの仕事をしようとするものについては国土交通大臣が、一つの都道府県の区域の中でこの仕事をしようとする機関については都道府県知事がそれぞれ指定を行うこととしたところでございます。この指定確認検査機関が具体の公共団体の区域内で行いました確認につきましては、建築基準法第六条の二第一項の規定によりまして、建築主事が行った確認とみなすと規定されております。
 なお、本年六月二十四日、最高裁の小法廷の決定によりまして、建築基準法の趣旨にかんがみ、特定行政庁に国家賠償法上の被告適格を認めたものでございます。この決定につきましては、その指定に特定行政庁の関与が全くないにもかかわらず、指定確認機関の確認行為により生じた結果について、責任を結果として負わされることになる地方公共団体から異論があることも事実でございます。
 私どもとしましては、今後、社会資本整備審議会の基本制度部会で、この最高裁決定の検証も含めまして、建築確認制度のあり方についてきちんと御議論をいただいて、結論を得たいと考えております。

第164回国会 本会議 第27号(平成18年4月28日(金曜日))

  1. 建築確認行為は行政の行為です。昨年の最高裁判決でも、建築基準法は、「建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認に関する事務を地方公共団体の事務とする前提に立った上で、指定確認検査機関をして、上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下において行わせることとしたということができる。そうすると、指定確認検査機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、地方公共団体の事務であり、その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。」とされています。

 ところが、実態は、民間確認検査機関の確認が特定行政庁の確認とみなされることから、特定行政庁の民間確認検査機関へのチェック機能は働かず、責任まで民間丸投げの状態になっていたのであります。政府案では、この部分が全くこれまでとは変わっておりません。民間確認検査機関が行った建築確認も特定行政庁の責任となるにもかかわらず、それをとめる手段がないという状態が続くのであります。

第164回国会 国土交通委員会 第19号(平成18年5月12日(金曜日))

  1. 建築確認というところに見落としがあったこと、客観的な事実としてはそれは明らかなわけですし、建築確認事務というのは、民間検査機関がやれ特定行政庁がやれ、これは自治事務、公の事務であることは変わりはないというのが最高裁の考え方でございまして、そういう意味では、行政の関与がそこには明らかにある。

第163回国会 国土交通委員会 第8号(平成17年11月30日(水曜日))
○鉢呂委員 そこで、特定行政庁が直接、あるいはまたこういう検査機関が行った確認検査をして、その場合の賠償責任、これは当然ある、こういうふうに最高裁は認めたんだろうというふうに思いますが、これは大臣として、いわゆる特定行政庁、地方自治体等でありますが、それは賠償責任がある、こういうふうに受けとめていくことは当然だろうと思いますが、いかがでしょうか。
○北側国務大臣 この最高裁決定は賠償責任について言っているわけではありません。当事者適格という専門的な言葉でございますけれども、それについて、当事者適格が特定行政庁にありますよということを言っている決定でございます。責任論までについて述べているわけではありません。
○鉢呂委員 もちろん、これは当然そこまでは述べておりません。しかし、民間検査機関に対しても書類の偽造へのチェックが不十分だった、そういった過失が立証できれば、いわゆる不法行為を根拠に賠償請求というものが成り立つ、こういうふうに思われますが、大臣、いかがでしょうか。
○北側国務大臣 この最高裁決定からどこまで言えるかという議論については、今政府部内でもまさしく検討をしているところでございます。今委員のおっしゃった指定検査機関に過失があった場合に、それで相当因果関係の範囲内で損害が生じた、その損害について賠償責任はどこにあるのかという問題をおっしゃっているわけでございますけれども、それに特定行政庁がその責任を負うのか否かということについて、まさしく今政府部内で検討しているところでございます。
○鉢呂委員 これは非常に大事なところでありまして、もちろん瑕疵担保責任は建築主、売り主にあることは法律でも認められております。同時に、それを建築士が設計した、あるいは構造計算をした、こういう場合も、強度計算等で偽造したという場合は、やはり民法不法行為ということで、賠償責任、賠償請求の責任が生ずる、こういうふうに受けとめられておるわけであります。
 そして、その上に立って、こういった検査機関、特定行政庁というものがチェックを見逃したという形になれば、当然それは賠償請求が発生をすると。ここは行政機関で今検討しておるということですが、やはり早急に結論を出す必要がある。
 単に今まで大臣は、民民の問題だけではないという形で政治の責任というような形を言っていますが、法律的にもきちんとした責任が発生するのかしないのか、やはりこれは早急に結論を出さなければならない問題である、私はこのように思いますが、もう一度答弁を願います。
○北側国務大臣 今委員のおっしゃった問題というのは、非常に重大な問題であると私も当初から認識をしておりまして、今政府部内の中で検討しているところでございますし、また、事実関係について、当然これは前提があるわけですね。その事実関係についても当然調査をしていかないといけないというふうにも思っております。
 委員のおっしゃっている指摘については、大切な御指摘であるというふうに十分に認識をしております。

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最高裁の小法廷の決定
主    文
       本件抗告を棄却する。
       抗告費用は抗告人の負担とする。
         
理    由
 抗告代理人栗田誠之の抗告理由について
 1 記録によれば,本件の経緯は次のとおりである。
 株式会社東京建築検査機構(以下「本件会社」という。)は,建築基準法77条の18から77条の21までの規定の定めるところにより同法6条の2第1項所定の指定を受けた者(以下「指定確認検査機関」という。)である。本件会社は,横浜市内に建築することが計画されていた大規模分譲マンションである本件建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであること等につき同項所定の確認(以下「本件確認」という。)をした。
 相手方らは,本件建築物の周辺に居住する者であるが,本件建築物が建築されることによって生命,身体の安全等が害されるなどと主張して,本件会社を被告とする本件確認の取消しを求める訴えを提起した。相手方らは,本件建築物に関する完了検査が終了し,上記訴えの利益が消滅したことから,行政事件訴訟法21条1項の規定に基づいて,上記訴えを,本件確認の違法を原因として抗告人に対する損害賠償を求める訴えに変更することの許可を申し立て,原々審は,これを許可した。
 2 建築基準法6条1項の規定は,建築主が同項1号から3号までに掲げる建築物を建築しようとする場合においてはその計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて建築主事の確認を受けなければならない旨定めているところ,この規定は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることを確保することが,住民の生命,健康及び財産の保護等住民の福祉の増進を図る役割を広く担う地方公共団体の責務であることに由来するものであって,同項の規定に基づく建築主事による確認に関する事務は,地方公共団体の事務であり(同法4条,地方自治法2条8項),同事務の帰属する行政主体は,当該建築主事が置かれた地方公共団体である。そして,建築基準法は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて,指定確認検査機関の確認を受け,確認済証の交付を受けたときは,当該確認は建築主事の確認と,当該確認済証は建築主事の確認済証とみなす旨定めている(6条の2第1項)。また,同法は,指定確認検査機関が確認済証の交付をしたときはその旨を特定行政庁(建築主事を置く市町村の区域については当該市町村の長をいう。2条32号)に報告しなければならない旨定めた(6条の2第3項)上で,特定行政庁は,この報告を受けた場合において,指定確認検査機関の確認済証の交付を受けた建築物の計画が建築基準関係規定に適合しないと認めるときは,当該建築物の建築主及び当該確認済証を交付した指定確認検査機関にその旨を通知しなければならず,この場合において,当該確認済証はその効力を失う旨定めて(同条4項),特定行政庁に対し,指定確認検査機関の確認を是正する権限を付与している。
 以上の建築基準法の定めからすると,同法は,建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認に関する事務を地方公共団体の事務とする前提に立った上で,指定確認検査機関をして,上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下において行わせることとしたということができる。そうすると,指定確認検査機関による確認に関する事務は,建築主事による確認に関する事務の場合と同様に,地方公共団体の事務であり,その事務の帰属する行政主体は,当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当である。
 したがって,指定確認検査機関の確認に係る建築物について確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は,指定確認検査機関の当該確認につき行政事件訴訟法21条1項所定の「当該処分又は裁決に係る事務の帰属する国又は公共団体」に当たるというべきであって,抗告人は,本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たるということができる。
 また,本件会社は本件確認を抗告人の長である特定行政庁の監督下において行ったものであること,その他本件の事情の下においては,本件確認の取消請求を抗告人に対する損害賠償請求に変更することが相当であると認めることができる。
 3 以上と同旨の原審の判断は,正当として是認することができ,原決定に所論の違法はない。論旨は採用することができない。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 福田 博 裁判官 滝井繁男 裁判官 津野 修 裁判官 今井 功 裁判官 中川了滋)