永遠の文庫<解説>傑作選に取り上げられている本でありますが、以前はずいぶんと
普通の文庫本が充実していたことです。最近は、その昔よりもずっと多くの文庫本が
出版されているのですが、このように内容と解説が充実している文庫本というのは、
どのくらいありますでしょうか。
斎藤愼爾さんによる「傑作選」には、一冊ごとに斎藤さんによるコメントがついて
います。昨日にも記しましたとおり、斎藤さんといえば、当方にとっては中井英夫さん
でありますので、中井英夫さんの文庫本に寄せられた斎藤さんのコメントから紹介です。
一冊目は「虚無への供物」講談社文庫です。この文庫本はずいぶんと沢山購入しまし
た。わかりそうな人に、これを読んでみてはといってあげたりしたのですが、そのため
に安い本がありましたら、確保したのでした。
- 作者: 中井英夫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1974/03
- メディア: 文庫
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厚さが半端でないので、手にしてめげた方もおられるでしょう。ペースをつかめれば、
どんどんとはまるのでありますがね。
「日高普のオマージュが凄い。『人間の一生にこれほどの傑作が二つも三つもできる
はずがない。』『ポーから始まる本格ものの歴史のしめくくり役をはたすのではない
か。』三一書房版『中井英夫作品集』の装幀者は同作品に無垢の敬意を捧げる武満徹」
講談社文庫版「虚無への供物」の解説は出口裕弘さんですが、それにはふれずであり
まして、日高普さんの評に言及するのがよろしです。それにしても日高普さんの書評集
がもっと手軽に読むことができるようになればいいのに。この日高さんのオマージュは、
「精神の風通しのために」(創樹社刊)にあるものです。いまは青土社から違った形で
でているので、それで入手することができるようです。
http://d.hatena.ne.jp/vzf12576/20081211
- 作者: 日高普
- 出版社/メーカー: 創樹社
- 発売日: 1976
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- 作者: 日高普
- 出版社/メーカー: 青土社
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本当のところを分かっていた読み手は、そうとうな方であります。
出口裕弘さんの解説からほんのすこし引用するとしたら、次のところでしょうか。
「犯人がわかり動機が解明されれば、頭脳的昂奮は完全に去り、書物は閉じられてたい
ていは二度と開かれず、つぎつぎに新しい作品が追い求められる。それが推理小説の
宿命だとすれば、そこからみごとに脱出したのがこの『虚無への供物』というアンチ・
ミステリーだといってもいい。」