読書記録8

道化の町 (KAWADE MYSTERY)

道化の町 (KAWADE MYSTERY)

’08年、「このミステリーがすごい!」海外編第16位にランクインした、カナダは
トロント出身のジェイムズ・パウエルによる短編集。彼はファンタスティックな奇想と、
夢見るようなユーモアセンスには定評がある短編小説のスペシャリストとのことだが、
この、日本で独自に編集された作品集でもその才能がいかんなく発揮されている。
本書は、’67年から’94年までの間に書かれ、主に≪EQMM(エラリー・クイーン
・ミステリー・マガジン)≫に掲載された12編からなっている。
印象に残った作品をいくつか挙げてみよう。
「プードルの暗号」−プードルがモールス信号を用いて人間と会話を交わすの
だが・・・。
「詩人とロバ」−王の飼っているロバに言葉をしゃべらせてみせると、10年の訓練
期間をもらった詩人。月日はあっという間に経って、いよいよその時がやってきた・・・。
「アルトドルフ症候群」−主人公のヘリコプターの同乗者は200年以上も目的地に
たどりつけずにいる外国の男爵。そのうえ、彼は無理難題を押し付けてくる・・・。
「折り紙のヘラジカ」−パウエル作品のシリーズキャラクターのひとり、カナダの
騎馬警察に所属する巡査部長代理ブロックが登場する。屋敷内での連続殺人を
パウエルなりに料理した失笑必至のパズラー。
「道化の町」−’89年度の≪EQMM≫読者人気投票で第1位に輝いた作品。
ファンタスティックで、ユーモラスで、なおかつパズラーをしている、パウエルならではの快作。
とにかく本書を読む際には、リアリティを求めずに、頭の中をカラっぽにして臨むことをおススメする。そうすれば、オフビートで、ツイストのきいたパウエルの世界が堪能
できること請け合いだ。