メンジー・チン「所得格差是正のために出来ること」(経済学101)
興味深く読みました。エントリーの要点は、
- 仮に最低賃金を9ドルに引き上げても、実質で見れば1980年代の水準(なので高すぎる水準とは言えない)
- 低所得者の限界消費性向を他より高いと仮定すると、最低賃金の引き上げによる低所得者の所得上昇は総需要の拡大に向かい、失業を減らす可能性がある。
のふたつにまとめられると思います。
上記のエントリーはアメリカの最低賃金について書かれています。「じゃあ、日本の最低賃金と実質最低賃金の推移はどうなっているのだろう?」と思って調べたのがこのエントリーです。
なかなか見つからない最低賃金の推移
ネットで探してみても長期のデータは見つからなかったので、岡山県立図書館へ行き『平成25年版 最低賃金決定要覧』を調べてみたのですが、これにも過去10年間分のデータしか載っていませんでした。うーん、意外と公表されていないものなのねえ。これは毎年出ているようなので、過去のバックナンバーをつなぎ合わせれば何とかなるかもしれませんが(力技)、今日はそこまでの余裕がなかったので、『平成25年版 最低賃金決定要覧』に載っていた10年分(2003-2012年)のデータを見てみます。
使用する物価指数
今回はGDPデフレーターと消費者物価指数(2010年基準)のうちコアCPIとコアコアCPIを用いました。
消費者物価指数基準だと実質最低賃金は名目最低賃金とほとんど変わりませんね。ホント、日本銀行の物価コントロールは世界一だ。
日本でも最低賃金の引き上げによる総需要の拡大は起こりえると思うけど、政府にそれだけの実行力(強制力)があるかはわからんし、低所得者に対しては減税や給付付き税額控除の導入、社会保険料負担を減らすなどをして、手取り収入(≓可処分所得)を増やす方法の方がよい気がする*1。
『デフレ下の賃金変動』は2006年に出版された本。著者は日本銀行に勤務されている方です。『入門国際収支』なども優れた入門書だったし、日本銀行の出す本は良い本が多いと思います。というわけで本書にも期待。『最低賃金改革』の方は、編著者の名前を見ただけで叩く人がいるかもしれないけど(笑)、まあまずは読んで判断しないとね。
*1:底辺貧乏にの私にとってはぜひお願いしたい政策でございますm(__)m