大江健三郎『「雨の木」を聴く女たち』

「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫)

「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫)

 短編集。「雨の木」というメタファーが中心をなしてはいるけれども、高安カッチャンをはじめとする登場人物と「僕」との人間関係がすごく面白い。笑えるということではなくて、複雑な人間関係が誇張されて入るけれどもうまく出ているような気がする。
 そして、それ以上にすごく小説の方法論的なことに意識的に書いているなぁと感じられる。フィクションではあるんだけれども、それにリアリティを出すための工夫がすごく面白いし、それは現在の大江健三郎にも繋がっているものだと思う。