ALL #41

ALL #40 - 日記


以前より外泊している日は多くなったが、それでもやっぱり病院にいる時間は長い。病院にいるときは自由がないし暇なのは仕方ないけれど、理不尽に不快な思いをして過ごすことは我慢できない。


僕はあるとき、とても耳障りな音がどこからか聞こえてくることに気がついた。それは僕の大嫌いなラジオの音で、いつもふと気づくとその音が聞こえていた。


病院の朝。起床時間は6時だけど、僕は大体朝食の運ばれてくる8時くらいまで寝ていた。そして朝食に前後してトイレに行き、その後は清掃の時間がある。そして午前中は、僕がほとんど唯一テレビで見ていたメジャーリーグの中継があったので、イヤホンをしてそれを見ていることが多かった。最初の頃は、そのメジャーリーグの試合が終わってイヤホンを外したときにラジオの音に気づくのがパターンだった。


しかしラジオの音は、もっと早い時間から鳴っているようだった。たまたま朝早く目覚めたとき、なんと朝6時台からラジオの音が聞こえてきたのだ。


いったん気になると、どんどん深みにはまる。ラジオの音にとても敏感になり、少しでもその音が聞こえてくると反応し、その音が流れている間どんどんどんどんイライラがつのる。音がするのはどうやら向かいの部屋らしかったが、4人部屋であの音が鳴らされていることが理解できなかった。違う部屋にいる僕でさえイライラするのに同部屋の患者たちはなんとも思わないのだろうか。


僕は我慢できないのでいっそのことその部屋に自ら入って抗議しようかと考えたけど、僕はかなりイラついていたので、激しく口論してしまいそうな気がした。でも患者同士のトラブルがその後も尾を引くのは望ましくない。考えた結果、そもそも病室で大きな音を鳴らすことは禁止されているのだからそれを徹底するのは病院側だと判断し、看護師に注意してもらうようお願いした。


看護師は「わかりました」と言ったので、僕はやれやれと思って安心したのだが、次の日も、また次の日もラジオの音は鳴った。


どうやら看護師も言いづらかったらしく、ちゃんと注意できていないような感じだった。言いづらいのはよくわかるが、ルールがあるんだからそれを守らない人は注意しなければならない。そう思った僕は、今度は看護師に対して相当イラつきながら「ちゃんと言ってくれましたか?」と念を押した。看護師は非常に嫌そうな顔をしていた。


でも看護師はちゃんと注意したらしく、ようやくラジオの音がこちらの部屋まで聞こえてくることはなくなった。


しかしその後驚くべきことが起こった。ラジオの鳴っていた部屋の4人のうち3人が、同時に退院したのだ。この部屋にいる人たちは長期入院の人たちばかりだったのでまさか3人同時に、しかもラジオの問題が解決した直後に退院するなんて思ってもみなかった。残った1人はラジオを聞く人ではなかったし…。それがわかっていたら、それなりのやり方があったのに…。


どいうことで、結局しつこく注意を頼んだ看護師さんとの間のわだかまりだけが残り、その看護師さんとの会話は、その後しばらくとても乾いたものとなるのだった。