サバイバル

 昨日の続き。
 ワシャはもともと防災・危機管理対応を仕事にしていた。だからサバイバルとか危機管理については一通りの勉強をしてきたし、いくつもの研修に参加してきた。残念なのは、自衛隊の訓練を受けていないことぐらいかなぁ。今はロートルになってしまったので、体が言うことを利かないが、若い元気な時期に軍事教練を体験しておけばよかった。

 そんなことから「危機管理」関連の本を何冊か書庫に収まっている。
柘植久慶『サバイバル・バイブル』(原書房
柘植久慶『21世紀サバイバル・バイブル』(小学館
柘植久慶『個人の危機管理術』(中央公論社
ハンター・S・フルガム『試すな危険!冒険野郎ハンドブック』(早川書房
宮坂直史『テロ対策入門』(亜紀書房

 例えば、『21世紀サバイバル・バイブル』である。その11章が「暴力犯罪」の対処法となっている。
《もし包丁を持った相手と戦う羽目に陥ったら、第一撃を喰わないようにし、間合いを一定に保つように心がける。手に鞄とか買った品物、あるいは週刊誌でも持っていたら、これらを道具として使う。つまり目の前にちらつかせておいて、鋭く短い前蹴りで一撃を加える。》
 と、言われても、素人が、とくに女性や子供が「短く鋭い前蹴り」を繰り出せるものではない。それが刃物を振りかざす逆上したキ〇ガイならなおさらだ。それに格闘技をやったことのない人には「前蹴り」を正確には操り出せまい。下手な蹴り方をすれば足の指や甲の骨を折ったりするのが関の山である。
《週刊誌など雑誌を固く巻いたり、書籍を相手の顔面にたたきつける、という戦法もある。これはどちらも決定的なものとはならないので、必ず同時に前蹴りを下腹部に見舞うといった、より効果的な連携攻撃が不可欠となってくる。》
 ううむ、「同時に前蹴りを」と言われても、これも訓練を積んでいないと、咄嗟にそうそうできることではない。
《ジュースなどの清涼飲料水のアルミ缶でも、顔面にぶつけたら威力はかなりのものだ。一発喰らってひるんだところにもう一発、という戦法で制圧する。》
 これもなかなか腕力のない素人には難しいかも。でもね、手元にあるものを投げつけるというのは効果的な方法だろう。
 柘植さんの「生き残り術」は普段から己を鍛えておくことが基本となっている。ただ、キ〇ガイや暴漢に遭遇したときに、こうすべきだというノウハウは知っておいた方がいい。その点でこの本は良書と言っていい。
 柘植さんも『サバイバル・バイブル』のあとがきで言っている。
《かなり強引な方法を採っている箇所もある。だが、実際のところ緊急事態や海外でのトラブルの際には、強引な手段を用いないことには脱出できないことが多い。戦うべきときは戦う――斃すべきときは斃す――これが私のサバイバルの底流にある考え方なのだ。比較的安全と言われる日本でも、いつなんどき刃物を持った精神異常者が襲いかかってくるかもしれない》
 それは、新幹線の中であるかもしれないし、秋葉原の交差点であるかもしれない。あるいは精神異常者が他国の独裁者であることも想定したほうがいいだろう。一人を平然と殺す人間は、人数が多数になっても同様だ。徒手空拳では人も国家も生き抜けない時代になっている。世間は平和ではない、人類はみな兄弟ではないということを知っているだけでもずいぶん違う。