藤野の散文-私の暗黙知-

毎日の中での気付きについて書いています

スーパーとレジ。

日経でスーパーのレジの「待ち」が無くなるという記事。
みればシステムを導入し、「店内の入出店者数」とか「レジ待ち客数」とか「平均滞在時間」とか「カップルや子供連れなどのグループ判別」をして今のレジの数と処理能力を計算して予測しているという。

なかなかの発想でよく工夫がされているとも思うが、センサーだけでも何十も必要でシステムの投資もかなり嵩むだろう。
しかも、レジが混む、と予測されれば人海戦術で対応せねばならない。
何とかならないものだろうか。

無線通信が普及してきた10年ほど前から、無線タグなどを使ってレジの会計を一気に処理する、という案が噂されていたけれど、結局無線タグは宅配便にもまだ付いていないし、「多くの個体にセンサーを付けて」出口や入口で一気に処理するという技術はまだブレイクスルーしていないようである。

一方交通機関はあっという間に「ICカード+自動改札」が占拠してしまったから、一旦ある課題が解決されれば普及の速度は以前に増して早くなっているようである。
記事にあるスーパーのレジシステムが、巷のコンビニに導入されることはなさそうだが(「レジお願いしまーす。」はなかなか効果がある)そう遠くない将来に、買い物カゴを持って通過するだけでノンストップの支払いが実現する日も近いのではないだろうか。

ITに限らないが、インフラの普及というのは意外と時間のかかるものである。
(つづく)

来客数は1日6000人超 混雑予測でレジ待ち撲滅
2015/3/18 7:00日本経済新聞 電子版

売り場面積が1万平方メートルにも達する巨大スーパー、ベイシア佐倉店。休日ともなれば1日6000人を超える客が来店し、店内は大にぎわいとなる。しかし、混み合うスーパーにありがちな「レジ待ち行列」は、このベイシア佐倉店では見当たらない。店内に設置したセンサーと過去の客数データを組み合わせ、必要となるレジ台数を予測、混雑の解消につなげた。

JR佐倉駅から車で約5分。前面に巨大な駐車場を備えた「ベイシア佐倉店」(千葉県佐倉市)が見えてくる。幹線道路沿いにあり、店内は水曜日の午前中にもかかわらず、主婦らであふれていた。

佐倉店は売り場面積が8000〜1万m2(平方メートル)を誇る「スーパーセンター」で、集中レジを囲むように食品や衣料品、住関連・レジャー・スポーツ売り場が広がる。まさに「日本のウォルマート」だ。1日に6000人を超える顧客が押し寄せることもある。

もやし1袋17円、白菜1玉98円、里芋100グラム38円――。EDLP(エブリデイロープライス)を前面に打ち出したPOP(店頭販促)が並ぶ店内で、顧客は目当ての商品を手早く買い物かごに入れ、入口近くの集中レジに向かう。

午前11時30分。顧客の数が午前中のピークを迎える。佐倉店の平均買い上げ点数は優に20点を超える。通常の食品スーパーと比べると、1人当たりの精算時間が1.5〜2倍かかるとみられる。

スーパーのレジといえば、昼前や夕方を迎えると、精算を待つ顧客が長蛇の列を作る光景が目に浮かぶ。にもかかわらず、佐倉店ではレジの前で精算を待つ顧客の姿は見当たらない。顧客はほとんど並ぶことなく次々と精算を終え、店を後にする。

レジの手前に立つベテラン従業員の荒屋幸子氏は、手元のPDA携帯情報端末)の画面に目をやると、まだレジを待つ顧客がほとんどいない状況にもかかわらず、閉めていたレジを1台開けた。そして顧客に「どうぞこちらが開きますので」と声をかけた。

その直後、精算に向かう顧客が急に増え、あっという間にレジが埋まった。まるで荒屋氏には数分後にレジが混雑することが分かっていたかのようだ。

■センサーで顧客数をカウント
なぜ荒屋氏はレジで精算する顧客の数が増えることを、事前に予測できたのか。
秘密は佐倉店が4〜5年前に導入したサーモ(赤外線)センサーを使った、精算客数予測システムにある。英システム開発会社の製品を採用した。海外では英スーパー大手のテスコが約700店舗で導入済みの仕組みだ。

予測システムは入り口とレジの近くに50台以上のセンサーを設置し、店内の客数データを収集。このデータと過去の実績データを組み合わせて分析し、これから必要になるレジの台数を予測する。

データの収集・分析・展開の流れはこうだ。まず、センサーから2種類のデータを収集する。

1つが店内の客数データだ。店の入り口に設置したセンサーで入店客数をカウント。予測システムはPOS(販売時点情報管理)端末とデータをやり取りできる機能を備えており、センサーから得た入店客数からPOSで精算を終えた顧客の数を引くことで、店内の客数を割り出す。

もう1つがレジで精算を待つ顧客の組数だ。これはレジの手前・上部に設置したセンサーでカウントする。予測システムは夫婦や家族連れといった「グループ」を認識するプログラムを搭載しているため、組数を正確に見極めることが可能だ。

分析フェーズでは、店内の客数とレジで待つ顧客の組数という2種類のデータに、レジの開閉状況や平均買い上げ時間といった実績データを加えて、専用のソフトウエアで解析する。そうすることで、今何台のレジが稼働していて、「15分後」と「30分後」にレジが何台必要になりそうかを予測し続ける。

この予測データが「レジ前係」のPDAに飛ぶ。レジ前係は店内の混雑状況を見極め、レジを開閉したり、空いているレジに顧客を誘導したりする。いわばレジ業務全般を取り仕切る「司令塔」といえる存在。それが冒頭に登場した荒屋氏だ。

レジ前係は予測データを見ながら、レジの稼働台数を調整し、必要であれば他部門から応援を要請する。もし15分後に必要なレジの台数が変化すれば、PDAが振動し、レジ前係に知らせる。

■「レジ1台に3組待ち」がレジ開けのルール
レジ前係がPDAに表示された予測結果を基にレジの開閉を判断するには、KPI(重要業績評価指標)が要る。KPIがないと、誰がレジ前係を担当するかによって、レジ開閉の判断基準がまちまちになってしまうためだ。

ベイシアは「1+2」というKPIを設定している。1+2とは、1台のレジに対して、2組以下の顧客が待つ状況を指す。もし3組以上の顧客が待つレジがあれば「混雑している」と判断し、すぐに閉めているレジを開ける。

レジ前係はこのKPIに基づいて、レジ開閉を判断する。例えば、今10台のレジが稼働していて、15分後に12台、30分後に15台という予測結果が出ていれば、すぐにレジ前係は閉めていたレジを開ける。一方、今10台のレジが開いていて、15分後に12台、30分後に10台に戻るような予測が出ると、すぐに閉めていたレジを開けずに様子を見るという具合だ。

予測システムの導入は大きな成果を生んでいる。ほぼ客数が同じだった日曜日で比較すると、1+2の達成率は22.6%から82.4%に60ポイント近く高まった。予測システムの導入を手掛けたベイシア流通技術研究所の重田憲司役員待遇所長は「CS(顧客満足度)は着実に高まっている」と強調する。

ベイシアが予測システムを導入した狙いは、CSとES(従業員満足度)、従業員の生産性という3つを同時に高めることにある。
食品スーパーにおけるクレームで断トツに多いのがレジ待ちといわれる。レジで数分待つだけで、CSが急降下するという調査結果もある。
レジ待ちをなくしCSを高めるには、たくさんのレジを開けておくのが手っ取り早い方法だ。とはいえ、これでは大勢の従業員をレジでの精算業務に張り付けておかなければならず、コストがかさむ。予測システムで15分後と30分後に必要なレジの台数を予測し、レジの開閉をうまく調整できれば、限られた人員で最大限にCSを高められる。

予測システムの導入は、ESの向上にも貢献している。というのも、レジが混雑した状況で、いきなり応援に入れられる状況が無くなり、従業員の心理的な負担が減るためだ。「従業員にはそれぞれ担当する仕事があるため、急に『応援に入れ』と言われることを一番嫌う」と重田所長は話す。

佐倉店が予測システムを導入する以前に、近隣にあった年商50億円前後のGMS(総合スーパー)が撤退した。これをきっかけに「お客様の数が約1.6倍に増え、レジが急激に混雑し始めた」と、当時佐倉店の店長だった大藤政道千葉第一SV部部長は話す。この状況を打開するための“切り札”が予測システムの導入だったわけだ。

導入当初はレジが混んでいない状況で応援に呼ばれるため、従業員から「混んでいないのになぜ呼ぶのか」と不満の声が漏れた。しかも、従業員が「もう混雑のピークは過ぎた」と勝手に判断し、レジを離れてしまうケースがしばしば起こったという。

重田所長は「これから混むから入ってもらうんだ」と粘り強く説き、レジ前係から指示があるまでレジを離れないように徹底させた。

予測システムはコストの関係で佐倉店以外には導入していないものの、レジ前係は他店にも設置している。週末など繁忙日の入店客の増減を時系列で把握。レジ前係の“人力予測”でレジ待ちの減少とCS、ESの向上を図る。
日経情報ストラテジー 山端宏実)
日経情報ストラテジー2015年2月号の記事を基に再構成)