J・エプスタイン「出版、わが天職」

出版、わが天職―モダニズムからオンデマンド時代へ

出版、わが天職―モダニズムからオンデマンド時代へ

 ランダムハウスなどの編集者を務めたジェイスン・エプスタインが語る出版論なのだが、年寄りの「昔は良かった」式の懐旧談ではなく、デジタル化、NPO化まで含めての出版論になっている。
 気になったところを抜書きすると

 出版はありきたりなビジネスではないのだ。出版は転職、あるいはアマチュアスポーツにずっと近く、第一の目的は活動そのものにあって、経済的結果ではない。私の時代、書籍の出版は、仕事の楽しさを求めて進んで働くオーナーや編集者にとっては報いられるところ大なる仕事、世間並みの収益を求める投資家にとっては失望の的であった。

 大手メディアが、映画産業の感覚で出版に高収益を求めるのは間違っているという。大ヒット作ねらいのブロックバスター戦略は、書店のチェーン店化などによって求められたのかもしれないが、それが反対に出版業界を衰退させたということで・・・
>> チェーンの小売業者が一段と高い回転率を求めざるを得なくなるにつれて、多くの価値ある本の平均寿命は縮まり、その結果、出版業の士気も傷ついている。三〇年ほど前、この現象が明らかになりはじめたとき、出版業をめぐるジョークは、本が棚にいられる寿命は牛乳よりも長くヨーグルトよりも短い、というものだった。状況はさらに悪化して、このジョークはもはや聞かれない。