平日の記録



パークシティ伊勢丹内のカフェコムサにて、「12星座のフルーツタルト」の中から「双子座のタルト」。クリームチーズのタルトにたっぷりマンゴー、てっぺんにスターフルーツ
宮益坂のコンシールカフェでは、「本日のデザート」アップルパイとコーヒー。フィリングは結構酸っぱめ。空いてたのでソファでゆっくりした。



カレル・ゼマン展」がじき終了してしまうので、松涛美術館まで出掛けた。
展覧会のタイトルの続きは「トリック映画の前衛 −チェコ・アニメ もうひとりの巨匠−」。映画の原画や使用された人形の展示に加え、数作品のDVD上映もあり、じっくり観るなら数時間じゃ足りないほど。制作風景を紹介する映像では、何を作ってるんだろうと思えば惑星の爆発や馬の背後の砂塵、機関車の吐き出す煙だったりして楽しい。
人形の動きや表情から、チャップリン手塚治虫を連想した。ヴェルヌを原作とするなど「普遍的」なロマンを題材にしており、ローカル色はあまり感じられないけど、チェコについての知識があれば、色々気付くところあるんだろうなあと思った。

蜂蜜



私の知ってるトルコといえば主に漫画「トルコで私も考えた」から、ここに描かれてるのはまた違う世界。時代は不明、人々は森や動物と共に生きている。印象としては、最近の作品なら「ブンミおじさんの森」に似ている。終盤、母と子が父を探して町のお祭り?に出向く場面では「バビロンの陽光」を思い出した。


小さなユスフは、養蜂家の父が大好き。しかしあるとき蜂が大量に死に絶え、父は新たな箱を仕掛けに出たきり戻ってこない。
地味な映画なので何度か眠気に襲われたけど、子どもものとしては面白かった。ユスフが父を慕う様子は、まるで恋しているよう。自分にくれるはずのものを、他の子にあげてしまったと思いむすっ→しょぼん、とするくだりがいい。作中ずっと「自然」なユスフの表情が、この「むすっ」の時だけわざとらしい(笑)
母が夕食時に出すミルクを、父が黙って飲んでくれるあたり「ブルーバレンタイン」の朝食の様子を思い出した(「あんたばかりいい役を取って!」ってこと・笑)。父から「夢の話は人に聞かれちゃいけない」と言われたユスフは、夢についてべらべらと喋る母親の膝から、恐れたような顔付きで離れる。


ユスフは、今の日本の家庭じゃあの年齢ではしないだろうことをする。りんごをナイフで切ったり、蜂をいぶす器具のためにマッチを使ったり。馬に水をやるのに不安定なところにバケツを置いて、引っくり返してしまうのが良かった(笑)その後、火の前で濡れたノートを乾かす。こういう日常の場面が面白い。
父を待ちながら、大きな窓に面した部屋のソファで寝る。このソファが固そうだけど素敵で、私も眠りたくなった。一つのプレートに盛られた朝食も、大したことないんだけど美味しそう。


冒頭の一幕、画面に映った父の背中はとても広い。作中、「子ども」と「大人」…ユスフとその外の世界とははっきりと分かれている。しかし彼が戻ってこない父の「死」を理解した時、初めて、家や学校の外観、先生の顔など、外の様子がはっきりと映るようになる。彼のその後を描いたという前二作も、観てみたくなった。

Peace



猫がいっぱいの予告編からはどんな映画だか分からなかったけど、想田監督のこれまでのドキュメンタリー、面白かったなあと思い観に行った。


監督の妻の両親の姿を追ったドキュメンタリー。岡山県に暮らす二人は、障害者や高齢者を車で移送する「福祉有償運送」やヘルパー派遣の仕事に携わっている。夫の寿夫は家に現れる野良猫たちにエサをやり続けていたが、一匹の「泥棒」により調和が乱れていた。


まず単純に、ドキュメンタリーを劇場のスクリーンで観るのっていい。とくに想田監督のは、煩くないから自由に楽しめる。自然光から何時くらいかな?と想像したり、画面の隅に面白いものを見つけたり(91歳の田中さんのベッドの脇の缶ソーダとか・笑)。長回しのうちに現れる、通行人による町のひとコマ。もっと長いスパンで言うならば、追い続けるうちにふと飛び出してくる、誰かの思い。
監督が走るのか画面が揺れれば頭がくらくらし、登場人物が監督に話しかけ、監督がそれに応えれば、映像にそれまでと違った空気が流れる。前二作にはあまりなかった、「揺らぎ」というか「若々しさ」を感じた。


「福祉有償運送」に儲けはない、むしろ毎月赤字の状態だ。それでもなぜ続けるのか、との問いに寿夫は「惰性でしょうね」と言う。田中さん宅を訪ねた廣子は如才ない会話の合間に鯵とナスを焼き、駐車場代が一時間分しか出ないことを嘆く。
寿夫は、猫にエサをやるのに市販のお弁当容器を使用している。牛乳を添えるのは、元教員ならではの発想かな(笑)時に庭石に直接キャットフードを置くのが気に掛かっていたら、案の定、妻に「近所の人に迷惑かけないように注意すると、私が悪者になっちゃうんだから」「そこが大嫌いなところ」と言い放たれる。「いいこと」してる人が家族にとって完璧であるとは限らない、当たり前のことだ。それを背中に聞きながら横になったままの夫の姿はまさに「フォトジェニック」、こんな場面に遭遇できるなんて監督は運がいい(笑)


91歳の田中さんは「Peace」を吸い続ける。野良猫たちは「泥棒」を受け入れ、新たな共同体が生まれる。色々な物事を盛り込みながら、どこか円環のようなものを感じさせる映画だった。