タイタニック 3D



公開時に何度か観て以来、まさかまたスクリーンで会えるとは。感慨深かったので、大した感想は無いけど(笑)記録を。氷山にぶつかってからの後半はやっぱり最高!ベッドの脇の写真(最後のは「馬に乗ってる」んだよね)からのラストはやっぱり号泣。


冒頭の探査のくだりから、乗船時の様子、室内調度、機関室などの描写に、あらためてキャメロンの「タイタニック熱」を感じた。
肝心の3D効果については、上手く言えないけど、「2D映像を見てる時に頭の中で作り上げてるもの」がそのまま眼前にあるという感じ。無用な手助けのように思ったけど、そういうのがこれからの3Dなのかな?長丁場なのに全く疲れなかったのは、やはり技術が高いのかな?


ケイトもいいけど、レオ様の輝きは尋常じゃない。初登場時の、スケッチしてる目だけのカットからしてぞくぞくしてしまう。そして何といっても、正装でディナーに現れて、ケイトの手にキスする時の上目遣い!私があらゆる映画の中で最もときめく場面の一つ(笑)それから後半、ケイトを騙してボートに乗せた後の彼女目線の顔、あんな見せ場があったなんて忘れてた。
二人のやりとりが、観ていてとても気持ちいい。斧を振り下ろす前に試してみるも結果はアレ…でも「君ならやれる!」、でもって後で馬鹿みたいに笑っちゃうとか。ああいうの、ありそうだなあって。
それから、最初から最後まで「手」の物語だというのに気付いた。「フランス娘」についてレオ様が「手がきれいだろ」と言うのは、何か違う気もするけど(笑)例の船首でそっと持ち替える手と手、「びたん!」の場面、手錠の場面、最後も手と手で終わる。


タイタニックの事故について、公開時は知らなかったけど後に得た知識を(映画のために脚色してると)確認できたのも楽しかった。双眼鏡を探してるセリフ、浸水するなり閉まる水密隔壁、何発もの信号弾、無線、最後まで発電機を動かす人たち。しかし「史実」(とされてるもの)を念頭に観ていると、たまに、ローズとジャックだけ「違うレイヤー」上に居るように感じられてしまった。群像劇じゃないからかな。
当時は知らなかったといえば、実在するロウ航海士役のヨアン・グリフィズが確認できた…どころかアップいっぱい、大活躍なのが見られたのも嬉しかった。彼がボートで戻ってきた時の遭難者の群れには、最も3D効果を感じた。

ルート・アイリッシュ



背筋ピンのまま観賞、終わってから席を立つのも難しかった。
ある種の容赦の無さとサスペンスみっちり、アクション有というあたり一見ケン・ローチぽくないけど、観終ってみれば、やはり彼なんだと思った。何を「言いたい」か、それをどういう映画にするか。


「ルート・アイリッシュ」とは、バクダッド空港とグリーン・ゾーン(米軍管理区域)とを結ぶ、テロの標的になりやすい「世界一危険な道」のこと(など、必要なことは作中のセリフで分かる)。そこでは民間企業による、いわゆる戦争ビジネスが幅を利かせている。かの地で雇われ兵として働く主人公ファーガスは、親友フランキーの「ルート・アイリッシュ」上での死に納得できず、真実を追う。


オープニングクレジットと共に流れる「回想」からして何とも言えずいい。いかにも「遠い昔」の図、ケン・ローチお手の物とも言える場面、船上で酒瓶を持ってふざけ合う少年二人は、未来に広がる無数の選択肢について語り合う。彼らが選んだ道が、この物語だ。
この「船」はその後、何度も登場する。「今も毎日これで行き来する」という主人公は、終盤「昔に戻りたい」と口にする。自分のことを「金の亡者、それが俺たちだ」とはっきり言う。


フランキーの妻レイチェルは、亡き夫の遺品を片付けながら「彼がイラクにいることを忘れようとしてた、ニュースも見ないようにしてた」と語る。一方、悲惨な事件の動画を見て部屋を出ていった彼女を追うファーガスは「現実を見ろ」と繰り返す。どちらについても、確かにそりゃそうだけど、何なんだと思う。でも自分だって、そういう人とは付き合いたくないなあ、と思うことくらいしか無い。それも何なんだと思う。


「ある民間兵の死」の謎を扱った話でありながら、主眼はそれを追う主人公の内面の変化にある。打ち付けられた棺をこじあけ親友の手を握る冒頭から、「真相」に近付き冷静さを失い部屋を飛び出し、物語の最後に至る。
フランキーの仕事のメールを「盗み見」したレイチェルいわく「愚痴ばかり、やめたがってたに違いないわ」。「私の知ってる彼とは別人みたい」という彼女に、ファーガスは「俺だって、こんなの君の前だけだ、船を降りたらもう別人だ」と言う。「レイチェルの前」でだけ「別人じゃない」のだ。このことと、最後に彼が彼女に(受話器をとってもらえない)電話で「愛してる」と告げるのは、無関係じゃないと思う。しかし、「お金をもらっても息子は返ってこない」と泣く母親の声を聞くと、どこかで「別人」になれるなんて贅沢なことだと思わされる。


ファーガスの、ラフなスタイルでのジョギングや、人気の無い(であろう)ところに持っている簡易ジムでのトレーニング、勘弁な拷問方法などがリアルだ。「そんな気になれなくて」殺風景なままの部屋で、窓の外に銃を構えてみる理由は何か?