★ジャン=ミシェル・アダン『物語論――プロップからエーコまで』(末松壽+佐藤正年訳、文庫クセジュ873、白水社、2004/04、、amazon.co.jp
 Jean-Michel Adam, Le récit (Collection QUE SAIS-JE? No.2149, P.U.F., 1984, 1999)


その昔、物語論を応用すれば、有限の物語素からプログラムによってさまざまな物語を生成できるんではないか、という今から思えばまことにはかない夢をいだいたものです。つまり、そうすれば限定された労力で、プレイヤーの行動に応じた物語のヴァリエーションを生成できるんではないか、と。でもそうは問屋がおろさなくって、結局のところ大半のゲームでは、ストーリーを映画と同様に脚本として作っていますね(あるいは、多少の整合性は無視して要素の組み合わせで物語を生成するものも若干あるようですが)。そうこうしているうちに、物語の展開を主体とするアドヴェンチャーゲームは(メジャーな作品としては)作られなくなりました。個人的には、まだなにかおもしろいことができるジャンルなのではないかという気がしてなりませんが、具体的になにかあるわけではないのでえらそうなことは言えません。大塚英志のように、もそっとばっさり割り切ると、実用(応用?)がきく手法にもなりうるわけですが、ゲーム製作の現場にゆとりがなさすぎるのも問題かもしれません。


★『美術手帖』第849号 2004年5月(美術出版社)
 特集=わたしがほしい美術館、いらない美術館


目下、国内の美術館は1780あるそうです。


★キャシャーンがやらねば誰がやる?

Yahoo BB のサーヴィスで、タツノコプロのアニメ『新造人間キャシャーン』(1973-74、全35話)の第一回を観る。近く公開される映画『キャシャーン』の予習(かつ復習)のつもりである。


なつかし〜と思ったのだが、放映年をみたらリアルタイムで観ているわけがない年だった。いずれ再放送かなにかで観たのであろう。佐々木いさおの歌はよく覚えている。それはともかく、こんな話であるとはさっぱり認識しておらんかったですよ拙者は。


環境汚染が進む世界で、人間にかわって危険地帯で働くためのアンドロイドを開発する東博士。彼が試作中のアンドロイド BK-1 が落雷によって狂い、東博士のみならず人間に対する反乱を開始した。BK-1は、「ブライキングボス」と名乗る。ブライキングボスは、博士を追い出した後の研究所(立派な西洋風の城です)をのっとり、そこで手下となるロボットを生産。アンドロ軍団を組織して、人間の駆逐に乗り出した(ロボットを生産する過程で、きちんと「アンドロ軍団」のロゴをプリントする芸の細かさ)。


東博士はただちに軍の出動を要請し、ブライキングボスに攻撃をしかけるも、反撃によりあっけなく大敗。いきなり人類滅亡の危機が出現したのであった。アンドロイドの反乱が国際問題になるなか(そりゃなりますわなふつー)、東博士は苦悶していた(そりゃ苦悶しますわなふつー)。「アンドロ軍団を倒すためには、より強いアンドロイドを作らねばならない……」――てゆうか、博士、反省してますかほんとに。より強いアンドロイドがまたぞろ故障したらどうするちゅうねん。


というツッコミはともかく、父の苦悶と世界的大問題を前にして、博士の息子・鉄也は、父・東博士にみずから新造人間となることを志願する。「鉄也、一度新造人間になってしまったら、人間にもどることはできないのだぞ!?」と問う父。その問答が行われるその書斎は意外と古風で、革装幀とおぼしき本がずらりと並んでいる。鉄也のファッション――ハイネックのシャツにダブルのジャケット、ストライプ入りのパンツ、首にはペンダント――も心なしか時代を感じさせる。


鉄也の強い意志におれた両親は、彼を新造人間化することを決意。東博士の居場所をつきとめたアンドロ軍団が押し迫るなか、鉄也を新造人間に改造するのであった。


いまや改造が完了した鉄也にむかって、東博士は言う。「お前がアンドロイドであることを人々が知れば、お前もアンドロ軍団同様、世界のめのかたきになるだろう」おお、なんだか世事に通じた見識だなァ――つうかそれは先に言うことでしょうが、パパ(そのまえに、だったらそのあからさまに目立つコスチュームをなんとかしなさい)――「お前は今日から、キャシャーンと名乗るがよい」――って、名前のアイデアをあたためてたんかよ、パパ。


というわけで、キャシャーンとなった鉄也は、迫るアンドロ軍団との戦いを開始するのであった。ちなみに、パパとママはあっけなく軍団の手に落ちてさらわれる。ナレーションのきめ台詞は、「キャシャーンがやらねば誰がやる?」


子供心に、『鋼鉄ジーグ』というアニメで「俺がやらなきゃ、誰がやる?」という主題歌の歌詞を連想しました。これもまた製作サイドの世代が背負っている問題意識の発露なんでしょうか。

タツノコプロ > 「新造人間キャシャーン
 http://www.aii.co.jp/contents/tatunoko/casshern/casshern_top.html