武富士が武富士トラストに債権譲渡

武富士の近況

 武富士は最近判決が出ても、3ヵ月後に支払を延ばしてくれるように言ってくる。4月に400万円の社債償還があるため、それを乗り切るため、償還源資を確保しようと必死のようだ。有力経済紙週刊ダイヤモンド武富士の今後にかなり否定的な観方をしている。
 貸借対照表を見る限り、財務内容は一見よさそうに見えるのですが、借入先が邦銀ではなく、外銀のようで、貸し剥がしが厳しいようです。
 武富士はこれまで減額和解を言ってこなかったが、最近は電話の向こうでも「5割で話がついたぞ」などと嬌声が上がっている。
 回収を急いだ方がよさそうだ。(10.8.18)

武富士が債権譲渡

 武富士が、任意整理により分割返済となっている貸付債権、簿価380億9200万円相当を、武富士トラスト合同会社に145億円で譲渡した。武富士のHPを見ると、武富士トラストとの資本関係、人的関係は無いとなっているので、この武富士トラストはSPCだと考えられる。
 http://www.takefuji.co.jp/corp/nwrs/detail/091214.pdf

武富士の財務は一見健全そのもの

 武富士の財務は、一件、健全そのものだ。09年9月末時点で、現預金と貸付金の合計は7931億円、今後1年間で払うべき流動負債は1374億円、その他の固定負債は1851億円。固定負債中長期借入金は269億円しかない。アイフルなんか現預金と貸付金併せて1兆2862億円あるが、流動負債は6097億円、固定負債は4113億円、ADR手続をとったのは仕方ない面がある。
 これに比べ、武富士の財務は健全そのものである。第一、武富士は、2018年に償還する社債を繰り上げで償還しようとしている。社債発行の場合に、株価が一定の額になったときに事前償還を請求できる旨定められている場合があり、この価格(トリガー)に触れた可能性もある。武富士側発表では社債権者の選択で、償還に応じたことになったとあるが、武富士は負債の解消を積極的に進めており、そうした経営方針により償還が進んでいるとも解しうる。償還に応じれば本来払わなければならなかった利息分を利益として計上できるメリットもある。8年後の借金を前倒しで完済しようというのだから、資金が余っているとの見方も可能だ。
 結局発行価格700億円中、414億円が事前償還された。(10.7.5) 
 ただ、武富士の資金繰りが最近急に悪化している。武富士は将来利息付での和解しか認めないとして、特定調停で調停に代わる決定が出ても、異議を出してきていたのだが、社債償還費用が用意できないらしく、6月になって急転、頭金10万を入れてくれれば将来利息無で和解すると言ってきた、19日の社債償還時期を過ぎてまた元通りの対応になったが、資金繰りの厳しい様子がうかがわれる。問題は負債の細かい内容のようだ。他の消費者金融は邦銀による借入が中心だが、武富士は外銀からの借入が中心だった。社債も海外投資家が中心で、リスケを申し出ても応じてくれず、貸し剥がしにあっているらしい。他の消費者金融は邦銀借入が中心のため、流動負債も借換による延長が可能なのに比べると、キャッシュフローで大きなハンディを背負っている。この1年を乗り切れば何とかなるだろうが、この1年が正念場というのは事実のような気がする。(10.7.15)

SPCとは何か

 ここから説明が難しくなるが、ご容赦願いたい。SPC=Special Purpose companyとは、従業員ゼロのペーパーカンパニーで、不動産の証券化によく使われる。GKTKスキームといい、合同会社をファンドとして、武富士証券化では武富士は「オリジネータ−」と呼ばれる立場にある)の倒産リスクから切り離す目的で作られる。GKは合同会社の意味で、TKは匿名組合の意味だ。この形態をとっての証券化となると、投資は、一般公募ではなく、機関投資家によるもののはずだ。そのため証券は発行されないから、今回の債権譲渡は証券化に伴うものというのではなく、単なる債権の流動化に伴うものというべきだろう。
 投資家(プライベートファンド)が、自己資金(エクイティー)、ノンリコースローンと呼ばれる銀行借入金(デット)とを源資として145億円を用意し、この145億円をSPCたる武富士トラストが引き受け、この145億円で武富士の債権を買い取る。銀行はこの武富士トラストに融資するので、武富士が倒産しても、武富士とは別法人のSPCから回収するので、リスクはない(これを「倒産リスクからの隔離」という)。

回収は武富士が行う

 上記HPによると、貸付債権の回収は武富士武富士合同トラストから委託されて行う。SPCはペーパーカンパニーだから、債権回収のための人員はいない。当然外部に委託するのだが、それを武富士が引き受けることになる。当然回収手数料が入ってくる。

今回の債権譲渡の意味するもの

 武富士が和解済みの貸金債権を譲渡したのは、和解済みのため、過払金リスクがないため、ファンドを構成しやすいからだ。武富士が債権譲渡した、すわ倒産かと考える人もいると思うが、そういうことではない。武富士社債を繰り上げ償還することを決定したため、銀行借入が難しいので、こういう手法で手元資金を用意しようというのだろう。これで得られた資金を社債繰り上げ償還の資金にしようと言うのではないか。

富士クレジットへの債権譲渡

 10年7月、武富士は富士クレジットへ債権譲渡した。問題は譲渡した債権の中身。現在返済中の債権なのである。こうした債権は過払リスク、減額リスクを含んでおり、買いたたかれやすい。6月に社債償還を無事終えたが、かなり無理をしているのかもしれない。

アイフルADR成立

アイフルADR成立

アイフルとその子会社、ライフ、シティズ、マルトー(この会社はは金融業は行っていない)が、かねて事業再生ADR手続を行っていたが本日12月24日開催された第3回債権者会議において、事業再生計画案について、全金融機関から同意を得ることができ、事業再生ADR手続が成立した。

ゴールドマンサックスの債権は買い取り

 ADRによってリスケジュールが成立した債権者はグループで併せて65金融機関になる(各社で重複する金融機関有り)。
アイフル  49金融機関
ライフ   28金融機関
マルトー   1金融機関
シティズ   1金融機関
 当初66金融機関あったのが、65になっているので、米銀ゴールドマンサックスからの債権買取請求にアイフルが応じたのだろう。

今後の支払スケジュール

 今回のADR手続の対象となった債権額は連結で2791億円。内訳となると、アイフルが1952億円、ライフが839億円。ちなみにマルトー、シティズは、アイフルの借金を連帯保証しているだけで、自身の負債はないため上記総額には含まれていない。
 2010年9月30日に100億円、その後2014年まで、毎年6月10日に165億円ずつ支払うことになる。それでも全額返済には至らないため、2014年7月10日までに借換(リファイナンス)をするか、または同日以後の弁済方法につき、金融機関とさらなる合意を得る必要がある。
 ただ、2013年までに償還期限がくる社債が2866億円あり、こちらは手つかずだ。ADRは社債債権者には適用されないからだ。アイフルはADRにより、ブラックリスト入りしたため、借金はできない。この点は多重債務者と同じ状況だ。このため自己資金で社債の償還、過払金の返金、運転資金を捻出しなければならない状態が続くことになる。
 アイフルはADR成立により、足元での資金繰りはプラスになった。しかし、中長期で見れば、まだ不安要素を抱えているということだろう。

ADR成立の効果

 ADRは銀行債務をリスケする効果しかないから、社債権者、株主は影響を受けない。過払金債権者も同様だ。(10.3.2追加)