文章読本さん江

文章読本と呼ばれる文章の書き方を学ぶための本を200冊くらい読んで
谷崎潤一郎から文章読本がどのように時代の流れとともに変化していったかということを考察する本である。
同時に明治時代から教育界で作文がどう位置づけられたかを見ていく。
で、それだけなら批評としては素晴らしいだけで役に立たないものになりそうなものだ。この本の著者の斎藤美奈子はサービス精神が旺盛なので、文章読本に共通して述べられているルールを教えてくれる。

5大心得
1 わかりやすく書け
2 短く書け
3 書き出しに気を配れ
4 起承転結にのっとって書け
5 品位をもて
というものだそうだ。

で、逆に禁忌(タブー)としては
1 新奇な語(新語・流行語・外来語など)を使うな
2 紋切り型を使うな
3 軽薄な表現をするな
の3つだそうだ。

で、文章読本が推す3大修行法も書いてある。
1 名文を読め
2 好きな文章を書き写せ
3 毎日書け

この本は書かれたのは2002年なので、ブログなどはまだ全盛ではなく
それほど触れられていない。
去年文庫化されたときにあとがきが書かれて著者が考えたデジタル時代の新・五大心得が
載っていた。

1 魅力的な見出しをつけよ
2 改行を多くせよ
3 長いテキストは小見出しをつけて分割せよ
4 漢字を減らせ
5 ここぞという箇所は(文字のサイズや色、罫線などで)目立たせよ

というものだ。
デジタル時代になって、今までの印刷されるものが一番偉いという思想が消えつつある。
本になるものがヒエラルキーの一番上に位置するという文章社会の貴族制度が崩壊してい
ると言う。
著者は文章読本に否定的で文章はもっと気楽に書けばいいということを何度も書いているが、実際ブログの流行で文章というものに対する考え方はそういう流れになってきている。
いまさら文章読本というものを読む必要はないかもしれない。
だが、逆にそういう時代だからこそ、文章読本を読んで、志賀直哉の文章を書き写したりして、お堅い文章を書いた方が目立つかもしれないと私は思う。

文章読本さん江 (ちくま文庫)

文章読本さん江 (ちくま文庫)