Until The Light Takes Us


ノルウェーブラック・メタルに関する映画『Until The Light Takes Us』を見ました。
1992年から1993年にかけての教会放火と1993年のユーロニモス殺人事件を軸に描いています。
DARKTHRONEのフェンリスとBURZUMのヴァーグ・ヴィケネス(カウント・グリシュナク)へのインタビューを収録しており、特にヴァーグの獄中インタビューは貴重。ユーロニモスを殺害したときの模様を自ら語っています。MAYHEMのヘルハマーやIMMORTALの2人も出てきます。
ヴァーグの裁判映像や、燃える教会のニュース映像が鮮明画質で収録されているのも嬉しいです。
また、ブラック・メタルの周辺カルチャーとして、ハーモニー・コリンやビャルン・メルガールド(Bjarne Melgaard)のパフォーマンスや展示も登場します。
とても面白い内容で、ノルウェーブラック・メタル暗黒部を知るのに大変役に立つ映画ですが、その一方で、ブラック・メタルという音楽そのものをもっとフィーチュアして欲しかった気も。一応BGMでいろんなバンドの音源が流れるのですが、ライヴ映像やアルバムなどにも焦点を当てて欲しかったです。ブラック・メタルという音楽に馴染みがない人がこの映画を見ても、とりあえず「なんか凄いんだな」と漠然とした印象しか受けないと思います。
90年代ノルウェーブラック・メタルはどうしても話題先行になってしまうので、たとえばBURZUMを聴いて、なんだか音質があまり良くなく、ドラムがポコポコしていることに拍子抜けする人もいるのでは。実際には『HVIS LYSET TAR OSS』とか、幕が一枚かかった向こうにある狂気が凄いのですが。
映画とは直接関係ありませんが、今年リリースされたBURZUMの出所第1弾アルバム『BELUS』の評価が意外に高くないのも、ブラック・メタルの虚像ばかりが肥大して、いざ聴いてみると、その虚像に追いついていないからかも知れません。とはいってもこのアルバム、ドローンになだれ込む終盤に戦慄させられます。
この映画でブラック・メタルに興味を持った人は、MAYHEM『DEATHCRUSH』やDARKTHRONE『A BLAZE IN THE NORTHERN SKY』など、本編で取り上げられているアルバムを聴いてみて、音楽そのものに耳を傾けていただきたいです。
ところでVarg Vikernesのカタカナ表記は"ヴァーグ・ヴィケネス"が一番近いと思います。