横浜でもフランケンズ

STスポットでも上演されたフランケンズ『ラブコメ』(原作/モリエール『女房学校』)

4月9日(土) 3:00PM
の回を見る。

二つの部屋を並べた舞台装置は、横二つの並び方など、基本的にはディ・プラッツ版と変わらないけれど、より小さなスペースに収められたよりコンパクトなものに見える。

ド・ラ・スーシュ役の衣装が、より現代的なものに変わっていたのは、良いと思った。他の人物とのバランスも取れているように思うし、内容を現代へと響かせるためにもより有効だと思う。

前回「しかし、そうなると、哀れな男の末路はどうなるだろう。」と書いたのだけど、今回、その男の描写がちょっと違っていた。前回は退場してしまったド・ラ・スーシュは、今回は、自分が育て上げ、結婚しようとしていた娘の部屋へと放心したように歩み入って、呆然とあたりを見回すようにして、終わる。

自分の計画すべてが崩壊したところで、自分のしたことを苦渋と共に思い返す男、というところだろうか。なんというか、喜劇の主人公を人間味ある存在に変えて、喜劇の内なるドラマを救い出すようなものになっているというところだろうか。

ド・ラ・スーシュと、ド・ラ・スーシュによって世間から隔離して育てられたアニェスとが対話する場面、「こんな世界のことを知っても、奴らと同じように気が狂うだけだ」「どんなひどい世界であっても、私は、世界のことを知って、彼と共に生きたい。」というやりとりに、やはり、今日的な意味合いを聞き取らずには居られない私だった。

結婚という制度と、自由恋愛との葛藤とか、人間本性と社会的行動様式との対比とかいった主題もそこに織り込まれていたわけですが。もちろん、それはある種の風刺であって、結婚という制度そのものが笑われているとも言えて、そういう所でも今日性が全く無いわけではない。結婚という制度は同じようなものとして続いているわけで。

それと、STでのフランケンズおなじみの、壁をおおった暗幕をあけるとそこに仕掛けがあるという手法を使っていた。

アニェスとの仲をド・ラ・スーシュに妨げられる若者オラースが、驚愕の事実を知って驚きのあまり倒れこむような勢いで上手の壁の暗幕をあけると、STの白い壁に「う〜。」の大きく黒い角ばった文字が。

アニェスが驚愕の事実を知って、下手側の暗幕をあけると「え・・・・」の文字が。

最後に正面の暗幕が開けられると「お!?」の文字が。

それで、欠けている母音の「あい」はどこに行った?というオチだったのだそうです。正解に自力で到達する前に答えを聞いてしまったのが残念。

ディープラッツ版のレビュー。
http://d.hatena.ne.jp/yanoz/20050329#p1

今までに私が書いたフランケンズ公演のレビュー
http://d.hatena.ne.jp/yanoz/20040811#p2
http://d.hatena.ne.jp/yanoz/20041101#p1