“報道機関”が付き合う相手
最近とんとご無沙汰のオーマイニュースだが、久しぶりに訪れてみると、記事の末尾に見慣れぬボタンが増えていた。
newsingへの投稿ボタンはしばらく前からあったのだが、Choixってなんだろうと思い、探してみるとこれのようだ。
一目見てDigg型のサイトだと分かる。newsingが円グラフなどを使ったりしてDiggからの差別化を図っていることを考えると、こちらはほとんどクローンという感じもする。「日本初のソーシャルニュース」サイトということだが、プレスリリースによると昨年の7月11日にオープンしたようなので、たしかにnewsing(7月27日)よりわずかに早い。
へえ、こんなのあったんだ。申し訳ないが全然知らなかった。
昨年来、どうも嫌な癖がついてしまったようで、こういうサービスを見かけると、ついどういう組織が運営しているのかを気にしてしまう。こんなのが「リテラシー」というなら、あんまりいらないのだが。それはともかく、Choixを運営している企業の会社概要を見てみる。
オーマイニュースの呉社長のコネクションだったのだろうか。わからない。この「株式会社アセントネットワークス」だが、事業内容によると、Choixの他にbitemというRMTトレーディングサイトと、OpenIDの発行サイトも運営しているらしい。……え、RMTサイト?
あらまあ、白昼堂々。例えば、下記のように自社のサービスを利用したRMTをはっきりと禁止している企業についても、特に気にしてはいないようだ。まあ、今のところ法規制があるわけではないので、勝手といえば勝手なわけだが。RMTですか、そうですか。
それにしても、両方とも聞いたことのないサービスなので、評判を見てみようと検索してみた。
CNetやインプレスで取り上げられたことがあったようだが、利用者の評判らしきものはないかと見ているうちに何かが気になる。
あー、こういうのなんて言うんですか?「ブログを利用した口コミマーケティング」でしたっけ?よく知りませんが。
では、RMTサイトのほうも。
- google:bitem
- google:デジタルコンテンツのトレーディングサイト『Bitem.jp』(バイテム)は、 オンライン上のアイテムを「売りたいユーザー」と「買いたいユーザー」とを結び合わせ、安全な取引を支援するトレーディングサイトです。
なんというか、その。おさかんですな。
Digg型のサービスというのは、実をいうとスパム的な攻撃に弱い。
スラッシュドットや2chのニュース板では、そもそもネタが採用されて掲載されなければ話にならない。たとえ採用されたとしてもそこに何らかの工作的な書き込みをする場合、コメントの文面を考えなければならない分、手間はかかる。いわゆるコピペやスクリプトですましている輩も多いが、あっという間に見抜かれて敬遠される。
はてなブックマークは手間としてはもう少し手軽だが、ブックマークしたIDをトレースされると、やはりばれる。プライベートモードなら第三者にはわからないが、プライベートばかりのブックマークが集まるエントリというのも不自然なので、やはりうさん臭がられる。
それに対してDigg型は、基本的に数値として現れるものがほとんど全てなので隠蔽しやすいのである。Diggの運営者自身はその危険性に気づいていて、様々な対抗策を取ってはいるが、モグラ叩きというかいたちごっこというか、そういう作業である。
- CNET Japan Blog - 渡辺隆広のサーチエンジン情報館:Diggスパムを商売に
- TechCrunch Japanese アーカイブ » Digg、スパム対策をアップグレード、サイトブロックを解除
外部からの攻撃に対して苦労するくらいであるから、運営者自体がなんらかの恣意を持った場合、それを第三者が見抜くことは当然難しい。たとえば、ある記事に対して肯定的な投票を実際の1.5倍になるような重み付けをするといった操作がソフトウェア的に、だから手間無くまた分かりづらく、可能だということだ。少なくとも原理的には。
そして、こうした懸念に対抗するには、基本的に運営者に対する信頼性しか担保するものがない。その信頼性は日々の運営活動から培っていくほかないわけだが、自分ちのサービスを宣伝するブログをそうと言わずに展開する企業に果たしてその信頼性を勝ち得ることができるのか、どうか。
おまけにこの企業はOpenIDという各種のインターネットサービスを横断する個人認証システムを運営してもいる。個人認証システムなんだから、それなりに個人情報は託さなければいけないし、どんなサービスを利用するために認証を求めたかというのも筒抜けにはなる。もちろんこちらは、ソーシャルニュースサイトの記事の浮沈などよりも、運営者の信頼性が求められる。
うーん。どうも世の中というのは私の思う以上に複雑であるようだ。あるいは、めまいがするほどにあからさまに。
おっと、ほとんどオーマイニュース自体の話題に触れていなくて申し訳ない。
まあその、編集長が辞任するのしないの、脅迫したのしてないの、辞任はしなかったけど噂にのぼっていた当人が編集長代理に就任したのという騒ぎの後では、たとえどんなサービスと提携したとしても、オーマイニュースへの信頼性はいささかも変わりないと私は信じている。数日後にはサイトのリニューアルオープンも控えているそうで、市民記者専用のSNSも始まるそうである。こちらもますますおさかんということで、頑張ってください。はは。