過去の事件解決に期待 白骨や毛髪からも容易にDNA鑑定

http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2007111002063415.html

現在、犯罪捜査に用いられている鑑定方法は、一定の長さの塩基配列を検出する必要がある。毛根のない髪の毛や、つめなどは最初から塩基配列が切断されているほか、古い血痕や白骨は腐敗が進み塩基配列がばらばらになってしまうために検出が難しかった。SNPsは検出部位が小さいため問題が少ないといい、各警察署で保管している古い遺留品の鑑定に威力を発揮するとみられる。

科学技術が進歩し、真実解明能力が向上することは喜ばしいことですが、真実発見の重要性は、「犯人を見出す」ことだけではなく、「犯人ではなかったことを確認する」こと、すなわち冤罪の発見ということにおいても重要でしょう。最近のアメリカでは、DNA鑑定により、過去の冤罪事件が次々と明らかにされ、死刑を免れた受刑者も多数出ていることが報じられています。
上記の技術が、過去の、既に判決が確定した難事件についての再鑑定にも使用され、真相解明に役立つことも期待したいと思います。

裁判員が自白調書の任意性を判断 最高裁研修所の研究結果判明

http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2007111102063483.html

骨子によると、まず裁判員裁判の基本的な考え方として(1)法廷での供述・証言に基づき審理する「口頭主義」を徹底する(2)審理時間を大幅に削減し、公判に立ち会うだけで必要な判断資料が得られるよう工夫する(3)裁判官室で供述調書などを読み込む従来の方法は採らない−などと指摘した。
続いて被告が捜査段階の自白を翻して起訴事実を否認し、捜査段階の自白調書は任意の供述か、取調官の強要によるものかが争われるケースに言及。これまでは取調官の尋問や被告人質問などが長く続き、裁判官が全供述調書を証拠採用した上で供述の変遷を検討して判断してきたが、裁判員裁判では「こうした手法は採り得ない」との見解を示した。
取調官の尋問について「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない。尋問も30分−1時間程度(主尋問)で終える場合に限る」とし、検察側に取り調べ時間、場所などのほか容疑者の体調も含めた経過一覧表の作成も求めている。
その上で自白調書の証拠採用に裁判員が同意する必要性を示し「捜査の実情に関する裁判官の理解を前提にすれば任意性を肯定してもよいケースでも、裁判員が確信する決め手がない場合(検察側は)任意性立証に失敗したと考えるべきだ」と付言した。

「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない」ということになると、常識的な意味での「任意」(刑事訴訟上の「任意」は常識的な意味では使われていないので)とは言えない取調べがあったと判断されれば、供述調書の取調べ請求が次々と却下されるということが起きる可能性が高いでしょう。正にその点を、上記の通り、「捜査の実情に関する裁判官の理解を前提にすれば任意性を肯定してもよいケースでも、裁判員が確信する決め手がない場合(検察側は)任意性立証に失敗したと考えるべきだ」と指摘しているものと思います。
この研究成果は、現行の捜査、特に被疑者取調べに対し、大きな変革を求めるものと言っても過言ではなく、その意味には極めて重いものがあります。
諸外国における取調べ改革(可視化など)を尻目に、改革を怠り従来の制度に安易に依存してきたツケが、ここに来て一気に噴出してきた、と言っても過言ではないと思います。

再犯の防止 厳罰化より就労対策を

http://www.hokkaido-np.co.jp/news/editorial/59891.html

驚かされるのは、治安が沈静化に向かっているのに、厳罰化の流れが止まらないことだ。裁判の確定判決をみると、じわじわ増えてきた実刑の懲役が昨年は四割を超え、死刑確定者がこの十年間で最多の二十一人に上った。
その結果、受刑者は増えた。刑務所の定員を超えて、六人部屋に八人収容するような状態が続いている。
白書は、全摘発者に占める再犯者の割合が近年、四割に迫る状況をふまえ再犯者の実態と対策をまとめた。窃盗の初犯者の九割が執行猶予となっていることなどを指摘し、さらなる厳罰化を促している。

約1年前に、英国の刑務所等を見学し、その際、ロンドン市内にあるICPS(刑務所研究のための国際センター)で話を聞いた際にも、厳罰化の限界、ということが強く指摘されていたことが思い出されます。

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070131#1170209041

犯した犯罪に見合う刑罰が科される、ということは、言うまでもなく重要なことであり、今後とも見逃されるべきではありませんが、あれも厳罰、これも厳罰、何でもかんでも厳罰、という厳罰一辺倒では、刑務所をいくら作っても追いつかず、長期間閉じ込めておいても出てくればまた犯罪に手を染める、という、一種の「無間地獄」のような状態に陥りかねないでしょう。
犯罪傾向の進んでいない者には、適宜、社会内処遇を取り入れる、犯罪傾向が進み施設内処遇がやむをえない者に対しても適切な教育・指導や職業訓練を行い、社会内処遇に適した状態になったものと認められれば、仮釈放等を積極的に検討する、服役以外の、例えば社会奉仕命令などの多様な、実効性ある制裁を取り入れる、といった、「処遇の個別化、多様化」も併せて考えて行かないと、この分野でも、日本は世界的な潮流から大きく取り残されてしまうことになりかねないでしょう。
その意味で、この北海道新聞の社説は、非常に重要な指摘をしているものと思います。

フィギュアメーカー社長逮捕=法人税5700万円脱税−元顧問弁護士も・東京地検

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071112-00000101-jij-soci

ヤメ検で、超有名・巨大事務所所属の、細々とやっている私など足元にも及ばない、立派な先生のようですね。>元顧問弁護士
先日、出版された

市場と法

市場と法

の中でも、この立派な先生のコメントを見た記憶があります。
刑事手続の他の分野はともかく、身柄拘束、という分野では、法の下の平等がそれなりに実現しているようです。最近、この業界で塀の内側に落ちてしまう人が目立つような気がするのは、気のせいでしょうか。

追記1:

他の報道によると、今年8月末で所属弁護士会を退会、とあり、超有名・巨大事務所に「所属していた」「立派だった」先生、という、過去形で語るのが、より正確であるようです。

追記2:

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20071112-00000107-mai-soci

事実婚関係にあり、隠した所得を自分の口座などに入金して管理していたという。

社長と顧問弁護士が、「事実婚」状態にある、というのも珍しいですね。これが「愛人関係」であれば、国税用語で言うところの特殊利害関係人、ということになりますが、事実婚なら夫婦関係ということになります。「たまり」の管理をやっていたようでは、共犯関係を免れることは難しそうです。