「天風録」中国新聞から引用

「天風録」2014. 2. 11 (火)
 文字通りのたわいない一節だが「屁のカッパ」は、本をただせば山の教えと聞く。木くずは燃えやすい分、火がすぐに尽きる。それを指さす「木っ端の火」が「カッパの屁」に転じた挙げ句、あべこべになったらしい。
 里山で暮らす炭焼きやアユ漁、牛の放牧の達人から聞き書きしようー。そう呼び掛ける集いが先日、庄原市内であった。農水省などが毎年開く「聞き書き甲子園」の庄原版といったところ。地元NPOのアイデアに乗った若者の感想も聞き物だった。
 「飼料米なんか目じゃない。牛には雑草が一番」と言い切る先達に農業高校の生徒はうろたえる。進路を探しあぐねる男子高校生は「何でも、まずやってみる」との言葉に目が覚めたという。それぞれの胸に残った一家言がある。
 教室とは違い、一対一で大人と向き合う。だからこそ、なせる業ではないか。地に足が着いた山の暮らしが骨太の人生観を目の当たりにすることで、自分の「器」が見えてくるのだろう。
 会場には何人もの達人が顔をのぞかせた。「わが子にもしてない話ができた」と喜んだ人もいる。聞き書きの輪が世代の橋渡しにつながれば、木っ端どころか、燎原の火となるやもしれない。

    ※ 「燎原」とは、野原を焼くという意味で、野原に火がつくと、勢いよく燃え広がって手がつけられなくなることから
    ※ 「木っ端は」、切った木の切れ端、木屑のことで、火を起こす時には早く燃え上がるが、すぐに燃え尽きることから、「あっけないこと」や「たわいもないこと」の喩えとなった。
    ※ 「屁のカッパ」 【河童の屁の語源・由来】. 「木っ端の火」が転訛したとする説と、水中でするため勢いがないことから取るに足りないことの意味になったとする説が

◎今日は建国記念日