大和但馬屋日記

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yms-zun2010-06-04

iPadを少し触らせてもらつた。「Autodesk Sketchbook PRO」が意外に良くてツボにハマる。いかん、iPadには興味ないことにしておきたかつたのになー、経済的に。思ひ付きを描きつけるツールとしてはかなり理想に近いと思つた。反面、文字入力はやはり今一つ。タブレット型の道具ではあつてもタブレットPCには遠く及ばない。といふか、iPadタブレットPCの一種と見倣す記事を発表時からしばしば目にするけれども、全然違ふものだと思ふ。どちらが優れてゐるとかではなく、別種の被造物。

「Game Room」のゲームパック5が配信された。今週の解禁タイトルには「Mr.五右衛門」が含まれてゐて大歓喜。「Mr.五右衛門」は、たぶん自分の中で「アーケード>家庭用」といふゲームの格付けを最初に意識した作品だ。もちろんそれまでも、「メモリ不足でステージ数を削られたドンキーコング」を代表とする、スペック不足による家庭用ゲームの残念移植は山ほど見てゐたけれども、そんなのは当り前のことだったし別に気にすることはなかつた。当時、家庭用のゲームハードが性能面でアーケードに敵ふ訣がなかつたのは常識であり、むしろそれでもアーケードの面白さをなんとか再現しようとするのが美徳ですらあつた。格付けといふのはそれとは別の、ゲーム作りの方向性についてどちらを好むかといふ話。

アーケードの「Mr.五右衛門」は、そのゲームの持つ独特のグルーヴ感といふか、テンポの良さが極立つてゐた。未だに、これよりノリの良いアクションゲームを自分は知らない。個々の要素を採り上げてみてもただ凡庸なゲームでしかないかもしれない。しかし、スタートしてから右へ右へと進むスピード感、キセル攻撃の間合の取り方、敵に捕まつたのを振り解く操作、スクロールしてそのまま面クリアデモに入る流れなどが実に絶妙で心地良い。単純に進行が早いとかいふ話ではなく、「ノリが良い」のだ。歌舞伎役者をデフォルメした様なキャラデザインと外連味のある演出がマッチして、全体的に完成度が高い。

程なくファミコンで「がんばれゴエモン! からくり道中」が出た。もちろん買つたさ。まあ、数千円払つて家で遊ばせるゲームとしては、ああいふ作りになるべきだつたのだ。コインいっこいれて数分間を楽しませるアーケードとは、ゲームの骨格から違ふ。同じなのはキャラの名前とBGMだけだ。当時としては最大容量のROMカートリッジにこれでもかと押込められた単調で広大なマップと隠しキャラ。「Mr.五右衛門」が歌舞伎ならこちらはナショナル時代劇だ。ノリの良さも外連味も捨てて、延々と似た様な展開の繰返しを楽しむもの。劇場とテレビの違ひ。それ即ちアーケードと家庭用の違ひ。

SFC時代に化けた「ゴエモン」シリーズは、あれはあれで面白かつた。シリーズのファンといふ程ではなくても、別に嫌ひなわけぢやあない。でも、「Mr.五右衛門」だけは、別格なんだよね。今頃になつてこれで遊べるのだから、嬉しいぢやないか。