フラット化するラノベ感想界
久し振りで田舎のお祖母ちゃんの家に行ったら、冷蔵庫にエビアンのペットボトルが入ってた。駅前には こっちと同じショッピングモールが出来てて、駄菓子屋はコンビニになっていた。
ライトノベル感想の2つの《お祭り》、2ちゃんねるライトノベル板大賞*1とライトノベルサイト杯の結果が出ました。ランキングの結果が似ている、という意見があることから、ちょっと類似度を求めてみました。
内積
どちらかで10位以内に入った作品(参考: 2005, 2006上, 2006下)の票数を並べて多次元ベクトルにして考えます。年間単位の場合は上半期と下半期を単純に加算します。
対 比 | 類似度 |
---|---|
* 2004年上下 2chラ板大賞 vs このラノ | 0.792 |
2005年上下 2chラ板大賞 vs ラノリン杯 | 0.832 |
2006年上期 2chラ板大賞 vs ラノサイ杯 | 0.911 |
2006年下期 2chラ板大賞 vs ラノサイ杯 | 0.907 |
ベクトルa,bの類似度(cosθ)は、cosθ=a・b/(|a||b|) を使って計算します。類似度が1に近ければ近いほどa, bが似ており、0なら無関係、-1なら正反対です。
参考までに、このライトノベルがすごい!*2に掲載された2004年版得点ランキングも同様に、2ちゃんねるラ板大賞と比較してみました(最初の行 *)。
分析
このラノ2004年版ランキングと2ちゃんねるライトノベル板大賞が似てない、ということには、ほとんどの方が納得できるんじゃないでしょうか。なので、類似度0.792というのは、「似ていない」度合の目安になるはずです。
ラノリン杯/ラノサイ杯と2ちゃんねるライトノベル板大賞の類似度0.832, 0.911, 0.907は、どれもこの目安より大きいし、年を経るごとに増加傾向にあるようにも見えなくもありません。ラノサイ杯と2ちゃんねるライトノベル板大賞の結果は、やっぱりかなり似ている模様です。
回想
思い起こせば、こんな様々なランキング1位が出た時代がありました。ほんの2年前です。
- 2ちゃんねるライトノベル板大賞(2004.08.27) … デュラララ!!(成田良悟) *3
- このライトノベルがすごい!(2004.12.09) … 涼宮ハルヒ シリーズ(谷川流) *4
- ライトノベル完全読本(2005.01.01)*5 … マリア様がみてる シリーズ(今野緒雪) *6
- 2ちゃんねるライトノベル板大賞(2005.02.06) … All You Need Is Kill(桜坂洋) *7
種々雑多な本に種々雑多な感想、なんでもありの雑食性がライトノベルの活力の源の一つだと、私は思っています。このラノ分析だって、異なるランキング、異なる集団があってこそ、です。
数年前までは、テキストサイト/ウェブ日記と2ちゃんねるの間には大きな断絶があったと思うんですが、今では行き来の抵抗が薄れてきているようです。交通網が発達してからの都会と田舎の関係みたいに。
均質
種々雑多な異なる意見が対等に並立・対立・乱立・分散するフラットと、熱的平衡の果てにどこに行っても同じ意見の均一化されたフラット。地方と都会の交通が便利になると、田舎の特色が消えてどこも中都市化しちゃう、なんて話がありますが、ライトノベル感想が色々な手段で読めるようになった現在は、熱的平衡にどんどんと近付いているのかも知れません。
今をときめく夕張市に行ったことがあります。看板だらけの町中はまさに異界なのに、本来ハレの場であるべき遊園地はどこにでもありそうなもので、これは何だ、なんて感じちゃいました。
厳格な著作権管理でアトラクションが漏れ出ないようにして差別化を図るディズニーランド、来場者を浴衣に着替えさせて強制的に縁日の風景に入れてしまう大江戸温泉物語、最高時速たったの42キロのジェットコースターを売りにする浅草花やしき、私が好感を持つ遊園地はどこも、《他とは違う何か》のアピールに成功しています。
どこにでもある遊園地がお荷物になった状況を見ていると、果たして感想を集めるだけで良いのか、結果に現れるような独自性がアピールできているのか、なんて思わなくもありません。
推理
このミステリーがすごい!(宝島社)と本格ミステリベスト10(原書房)の類似度は、2006年版*8 *9では、0.910とかなり高いものでした。容疑者Xの献身問題で両ランキングの存在意義が問われただけのことはあります。
ところが、2007年版*10 *11では大きく変わっています。そもそも一方の1位が他方ではランキングに登場しないぐらい。両ランキングのいずれかで10位に入っている作品の数が19作、一方で上位ランキングに入っていて他方では入っていない作品は9作、残った10作についての類似度も0.863と、独自性を出す方向に進みつつあるようです。
もちろん商業誌での話なので、今回の話題にそのまま適用すべきか、その点は考慮しておく必要がありますけど。
暗索
夕張で一番心に残ったのは、見切り品のご当地メロンでした。黴こそはえていないものの黄変した皮の中から出てきたのは、北海道なのに南国の ねっとりとした爛熟の香りと甘味。
どうやったら2つの祭を異化できるのか、そもそも異化すべきものなのか。私に何ができるのか、何もすべきでないのか。2つの結果が全然違うって方が、私的には断然面白いんですが――
今回、ラ板大賞への投稿は見送ったんですが、次回も遠慮しようかな なんて、ちょっと思っています。
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*1:http://book4.2ch.net/test/read.cgi/magazin/1168528573/
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