荻浦嬢瑠璃は敗北しない

メタテキストを読む能力こそ薔薇の花嫁

勝利者の王国を建てるべく革命を志す中学生 荻浦嬢瑠璃は、主人 飛鳥井全死の命で、生ぬるい日常に包まれる学校に戻ることになるが――メタテキストで世界を革命するギャルゲー文芸。
嬢瑠璃がその特殊能力を使って人が勝利者であるか敗北者であるかを見分ける度に、何だか苦い思いがして不思議な感覚。『機動戦士ガンダム』(富野由悠季) *2 *3 *4ニュータイプ・オールドタイプの世代論的二分法を読んだときには感じなかったもので、この苦さは、嬢瑠璃が身近な同世代の知人に対してもこの能力を発揮するからかも。
そんな身近な同世代の知人とのちょっとした会話のやりとりには、嬢瑠璃自身の思いとは裏腹に、『化物語』(西尾維新) *5 *6にも共通するようなキャッキャウフフ感があります。この楽しさと苦さのギャップがたまらない。
「空気」派と「メタテキスト」派が争う本作の設定は、Java言語のアナロジーで考えると、人間を、ブラックボックスとして外側からinterfaceを介して把握する「空気」、構成的に内側からextendsの列を見て解析するのが「メタテキスト」、という感じでしょうか。単に使えれば良いのか、内部をハックしたいのか、の差。
嬢瑠璃が唱える国是は、『リディック*7のネクロモンガー軍団の掟を思わせるマッチョぶり。次巻が楽しみです。

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