戦乱学園! 合戦の第一法則 弱い武将はよく攻める

勝ち戦のお祝いは栗ご飯で

寮生の食費その他生活費の額が模擬戦の結果で決まる晴嵐学園。新設された不破寮121名の胃袋をあずかる初代寮主 涼子は、隣地 犬上寮の敵対行動に――先に動いた方が負ける兵站国盗物語。
たとえば、殺人事件の真相と聖徳太子の正体を探る『カンナ 飛鳥の光臨』(高田崇史) *2を読んだりすると、歴史研究にはまったミステリー作家が研究成果を発表するために書いた作品なのかな、なんて思うことがあります。
一方、本作で語られる歴史の謎には、戦国時代の兵站の問題であったり、信長の三段撃ちの真相であったり、と、その道に興味のある人ならば、ある意味で《常識》とも言えるものもかなり含まれていて、「研究成果の発表」といった感じはあんまりありません。
本作の凄いところは、その謎を実践(実戦)に絡めて綴るところ。新米寮主 涼子に、他の寮主に対する知略能力上のコンプレックスを抱かせたところも凄い。他の寮主はみんなわかっているのに何故私にはわからない、こんなことで勝てるのか――と悩ませることで、歴史上の謎と寮生活とがぴったり重なり合い、本作でその謎を語ることの必然性が強く感じられます。
同じく学校同士の模擬戦をテーマにした『会長の切札』(鷹見一幸) *3では油断を狙った奇策も見処ですが、本作は、王道の戦術と戦略が見処かも。何回も読み返して自分で地図やキャラ一覧表を作ったりしたくなるような、噛みごたえのある作品が好きな方にお薦め。

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