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ヨムヨムエブリデイ

おはぎと珈琲


また雨。ぐっと気温が下がる。Tシャツの上からパーカを羽織る。キッチンで火を使っても汗をかかないのが素晴らしい。窓を閉めきっているせいか、いつもと同じテレビの音量がやけに大きく響く。
ジョルジュ・ペレック『眠る男』(水声社)を読む。『本の雑誌』10月号の青山南のコラムを読んだらもう読まずにはいられなくなって。雨の休日にタオルケットにくるまってだらだら読むのにぴったりの一冊だと思った。

 雨が降ってくる。おまえはもう家から外に出ない、部屋からもほとんど出ない。おまえは一日中大声で本を読む、文章を一行一行指で追いながら、子供のように、老人のように、言葉がその意味を失うまで、もっとも単純な文章さえもあやふやになり、渾沌としてくるまでに。夜がやってくる。おまえは明かりをつけない、おまえは窓ぎわの小さなテーブルに座ってじっとしたままでいる、両手で本を支え、もう読むことはやめて、家のなかのさまざまな物音にかろうじて耳を傾ける、大梁や床のきしる音に、父親の咳に、薪かまどに取りつけた鋳物のたがの音に、鉛の樋を流れる雨水の音に、はるか遠く車が道を走る音に、七時発のバスが丘のふもとの曲り角で鳴らすクラクションの響きに。『眠る男』(p.52)

400号記念スペシャルの『本の雑誌』10月号は、特集のなんでもベスト10を面白く読んだ。先日、鳥海修『文字を作る仕事』(晶文社)を読み、それまではなんとなく精興社書体が好みっぽいかなとぼんやり思う程度だった書体にモリモリ興味が湧いてきたところだったので、正木香子の選ぶ「本文書体ベスト10」なんかタイムリーでよかった。あと、武庫川古書店街の草」を訪ねる、そこだけぽかん出張所みたいな秋葉直哉のコラムもいいな。西村賢太「一私小説書きの日乗」は、最近は痛風の発作もなく健康になったせいか、あるいはスペースの都合か、晩酌の記述が控えめになったのが少し寂しい。緑のたぬきを豪快にすすってから就寝してほしい。
もっと書体について知りたくて、先週、図書館から正木香子の『文字の食卓』と『本を読む人のための書体入門』をとりあえず借りてきた。舞城王太郎の『短篇五芒星』のように本文の使用フォントをいちいち記載してくれたら書体シロートにはありがたいのだけど。