◆A・ヘミングウェイ『移動祝祭日』◆
- 作者: アーネストヘミングウェイ,Ernest Hemingway,高見浩
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/01/28
- メディア: 文庫
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会話が多く挿入されるので、これまで想像もしなかった芸術家たちの人柄がそこはかとなく、あるいは鮮明に浮かび上がってくるところが本書の大きな魅力である。
エズラ・パウンドが実は友達思いのとてもいい人だったり、T・S・エリオットが銀行員だったり(か、金勘定をしていたのか・・・)、シェイクスピア書店の店主シルヴィア・ビーチが冗談好きの愛すべき人だったり・・・等々は楽しい発見だったし、ご存知フィッツジェラルドとのやりとりはまるでコントのようだ。
ヘミングウェイは22歳、まさに弾けるような若さで、聡明な妻・ハドリーに夢中、みたいに書いているけど、まさか彼女一筋ってわけじゃないんでしょ・・・と思ってたらホントにそんなわけなくてちょっと笑ってしまったり。
競馬を楽しみカフェのウェイターとの小粋なやりとりを楽しみ、微かにアコーディオンの甘い音色が流れてきそうな四季折々のパリの美しい街並み、風変わりな芸術家たちとの交遊エピソードの数々・・・セピア色の甘い記憶を振り返るヘミングウェイの遺作。
浮かんでは消えるシャンパンの泡のごとく儚い祝祭の日々を、ぜひ味わってみてください。
私たちがだれであろうと、パリがどう変わろうと、そこにたどり着くのがどんなに難しかろうと、もしくは容易だろうと、私たちはいつもパリに帰った。パリは常にそれに値する街だったし、こちらが何をそこにもたらそうとも、必ずその見返りを与えてくれた。が、ともかくもこれが、その昔、私たちがごく貧しく、ごく幸せだった頃のパリの物語である。
(2013年2月5日記)