イノセンス 感想 ビジュアル面に対する苦言

初日に見てきました。
予告の段階から不思議に思っていた浮きすぎて見える3DCG問題は、恐らく作り手も分かってやってることで、スクリーンで見れば見映えするような演出が恐らく施されているのだろう・・・などと勝手に納得して劇場に向かったが、やはりそれは壮絶に浮いていた。
これは我々の中に蓄積されてきた従来のアニメ文法との齟齬が生んだ違和感であって、実際すごく革新的な映像なわけで・・・とか言って片づけたいところだが、正直そうした慣れや不慣れの問題以前に見せ方そのものに相当な混乱があると感じた。いや、確かにデジタルによるエフェクトは物凄かったのですよ。撮影による効果の限界を明らかに突破していることが素人目にも分かった。最初の殺人現場に主人公が到着するシーンとか、あんなのどうやって作ったのかと度肝を抜かれたさ。しかしオープニングの人形作りの3DCGとか、祭礼シーンの象さんやお面の質感には俺は心の底から萎えた。2Dとして見せたいんだろうけど思いっきり3DCGなのが丸わかりのハダリ型アンドロイドの顔なんかにも相当に萎えた。飛び散るクッキーやガラスにも当然のこと萎えた。あそこまで細部を緻密に作り込んどいて、なぜそんな無神経が通ったのか。正直全く分からない。
こうしたルックのズレは、例えば「動画は輪郭ありのセルテイストで、背景は絵画調で」みたいな方法論の問題とは根本的に種類が違う。あれも元々は技術的な制約から編み出された手法かもしれないけど、意外に人間の目の見え方に近かったからこそ定着したのだ。淘汰されず使い古されるほど使われてきたのにはそれなりの理由がある。一方で「イノセンス」だが、「人物や物体はセルテイストで、でも象とお面に限っては3DCGっっぽい感じで良いです」って、やっぱそれは変だよ。それは描き分けじゃなくて妥協に基づいた混乱だ。何が彼らを「これで行こう」と開き直らせたのか。あるいは開き直ったわけじゃなく、本気でセルのテイストとツルツルビカビカしたCG絵がルール無用に混在するルックが理想だったのか。だとしたら驚く。
いやね、実写映画はCGを上手いこと取り込んだじゃないですか。日本映画はいまだにどうしようもないけど、ハリウッドの映画は実写とCGの見分けがつかない時代にいよいよ突入しつつある。ひるがえってアニメはどうか。全然まだまだだと思うのです。いや、CGはセルの質感を模倣せよなんて言うつもりはないですよ。でもルックを混在させるなら混在させるで、それなりの見せ方ってものがあると思うのです。「今回は画面内の情報量が凄いです」とか自慢する以前に、煮詰めるべきことがあるだろうと。そこら辺には激しく苦言を呈したい。
あと天下のI.Gに言うのもおこがましいことだけど、歩きの動画が数箇所おかしかったです。枚数が多けりゃ多いほど偉いって時代でもないんだろうけど、別に少なければ偉いわけでもない。滑ってるように見えるところがあったし、所轄署の階段を上るシーンとか思いっきりカクカクしてた。あれはあれで良いのだろうか。ディズニー的な動きを排除しようと意気込んだのかも知れないけど、新しいものが提示できていたようには思えなかった。て言うかあれはマズいと思う。あとこちらはCGだけど、クリオネ潜水艦の動きも物凄い変だった。すっげえ固そうにビチビチしてた。我ながら何となく叩きすぎの感もあるが、ビジュアル面で凄くない部分も結構あったってことです。色んな意味で実験作のレベルに留まったと思う。景観は流石に圧巻だったけどね。空撮のシーンとか(アニメに空撮も何もないけれど便宜上)、とても美しかったし。
お話は「SF刑事物」として普通に愉しみました。押井映画とか攻殻機動隊について知識も思い入れも全くなかったんで、うーむ理解できるかな、苦しみそうだなと身構えてたけど、意外に大丈夫だった。最低限インターネットを使ったことがある人ならば、怯えることはないかも知れない。SFにもアニメにも全く興味のない人と一緒に見に行ったけど、俺より話の筋を掴めていたし。あ、でも始まる前にパンフレット熟読しとかないと多分駄目だ。注意が必要だ。て言うかそれがスタートラインってことはやっぱ一般的な娯楽映画として失敗してるんじゃん。
終盤「潜入刑事大暴れ」になってからは、かなり手に汗握りました。人形の群れは夢に出たよ。
ほんの少しだけネタバレしますが、ラスト近くでバトーが子供に向かって大人げなくキレます。あれに賛同できるかはちょっと微妙なところだ。確かに一理あるものの、それ以前にゴーストコピー自体が別の倫理に抵触しまくっているので、純粋な人形論としては若干ブレてしまっている気がする。事件終了後に、飼ってる犬のゴーストを少女の人形に封じ込めたバトーが突如孤独な魂<ゴースト>の乱交を開始するような驚愕の展開が待っていたら「うわあ、これは凄い映画だ!」となったかも知れないが、あの八つ当たりには正直説得力を感じなかった。何となく煮え切らない。いや、そう言う方向で煮え切られても非常に困るのだけど。
あとこいつロン毛じゃん!とも思った。

イノセンス(英語字幕版)上映中止

m@stervision i/o port 3月 8日(月)01時39分13秒より。

イノセンス(英語字幕版)」の上映につきまして、
字幕が不完全であるため、上映を急遽中止させていただきます。
お客様には大変ご迷惑をおかけいたしますことをお詫び致します。
何卒、ご理解賜りますようお願い申し上げます。
※なお、英語字幕上映予定であった18:50、21:10、23:30(木金のみ)、
25:50(木金のみ)の上映は、英語字幕なしでの上映となります。

We discontinue the show of "INNOCECE" with English subtitle for
imperfect subtitle.
We are very sorry, but we ask you to understand.

不完全な英語字幕ってどんなんだろう。見てみたかった。