最大のスパイ事件

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

ヒューマン・ファクター―グレアム・グリーン・セレクション (ハヤカワepi文庫)

世界最大のスパイ事件、といっても過言ではないだろう、キム・フィルビー事件。英国諜報部(007でもお馴染み)MI6の長官候補にもなった男が、実は20年以上にもわたってソ連のスパイだった。

キム・フィルビーは正体がバレそうになり、レバノン経由でソ連に亡命した。ソ連では英雄として切手にまでなった。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD%E3%83%A0%E3%83%BB%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AB%E3%83%93%E3%83%BC

そんな事件をもとにした有名な小説が2つ。1つは以前にも書いたジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』。『裏切りのサーカス』として映画化にもなった。
http://d.hatena.ne.jp/ys22ys/20130826/1377528542

もう1作は、ジョン・ル・カレ同様、MI6の諜報部員だったグレアム・グリーンの『ヒューマン・ファクター』。グリーンは『第三の男』の原作・脚本家としても有名だが、上に書いたソ連スパイ、キム・フィルビーの部下として、あるいは友人として共に働いていた。

そんなグリーンが、その友情ゆえか、ある程度書き上げながら一度は出版を断念し、数年後、改めて世に出したのが『ヒューマン・ファクター』。英国諜報部で働く2重スパイの話だ。

なぜ男は、祖国を裏切ってソ連のスパイとなったのか。それが題名にあるとおり、ヒューマン・ファクターなのだ。人間らしさとは何か、男(やその家族)にとっての祖国とは何なのか。