ガクセー1

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

言論統制―情報官・鈴木庫三と教育の国防国家 (中公新書)

遅ればせながら読んでいる。こういう本を読むときにいつも困るのは、戦前と戦後の学制の違い。かつて「中学」「高校」と呼ばれていたものが、いまの「中学」や「高校」とは別物なのは理解しているが、「中学生」や「高校生」にいかなるコノテーションが込められていたのかまでは、なかなか理解できない。Wikipedia学制改革で大まかな輪郭はつかめるが、これ以外にもいまでは存在しない職業軍人を養成するための学校(『言論統制』を読むのに必要なのは、むしろこちらの知識)まであるのだから、どうにもややこしい。
ちなみに地方出身であるオレは上京する前までは、現代日本を舞台にした小説の多くが読者が東京の地理を知っているのを前提にして書かれていることにかすかな苛立ちを覚えていたのであった。

「戦前」への回帰

唐突に大岡昇平ザルツブルクの小枝』(ISBN:4122005744)より引用。はじめてパリを訪れた大岡昇平とパリ在住歴が長い森有正が、1954年に交わした会話。

(森)「東京も変わったでしょうね」
(大岡)「そりゃ、変わりましたとも。便利という点じゃ、戦前に帰りましたよ」

「戦前・戦時中は決して『暗黒の時代』ではなかった」は、いまではひとつの通説になっているが、反戦主義者の進歩派知識人であった大岡までもが実感を込めて「便利さという点では、戦前に帰った」と語っているのは、ちょっと面白い。
学制の話も東京の地理の話も、前にも書いたような気がするが……。

ガクセー2

行きつけの居酒屋で『言論統制』を読むながらひとりで呑んでいたら、オレよりもちょっと年下と思える女性のグループから「学生さんですか?」と訊かれる。ラフな服装で活字の細かい本を読んでいたのが、いかにも学生風と思われたようだ。はやく年相応に見られたい。
といいつつ、実際におじさん扱いされると腹立たしくなるわけだが。