二四〇九階の彼女Ⅱ 

二四〇九階の彼女Ⅱ 西村悠 電撃文庫 2007年3月25日

二四〇九階の彼女〈2〉 (電撃文庫)

二四〇九階の彼女〈2〉 (電撃文庫)

☆☆☆☆☆

 無数の階層からなる『塔』。その塔の外に出るためにサドリとカエルは長い旅をしていた。かつて交わした約束を果たすために――。
 二四〇九階の彼女、その2巻目です。で、感想。割と楽しめました。それぞれ「幸せ(ルール)」が違った世界での物語りです。個人的には「二一三階のパズル」と「一二四四階の競争」が印象にのこっています。
 「二一三階のパズル」は短い話なのですが、なかなか楽しかったです。カエルの言動が笑えます。なにげにあのオチ(以下反転――正解のないパズル)が良かったですね。こういうのは結構好きです。
 一方、「一二四四階の競争」はサドリとカエルの出会いの話。なかなか切ないですね。カエルの口調にああいった秘密があったとは・・・。なんかカエルがとても好きになりました。
 そんな感じでわりと楽しめたのですが、ラストのアレ(以下反転・重要なネタバレ含む――目的地への到着)には呆然。なにもこのタイミングでなくても良かったのではないかと。ちょっと微妙な感じでした。

二四〇九階の彼女

二四〇九階の彼女 西村悠 電撃文庫 2006年10月25日

二四〇九階の彼女 (電撃文庫)

二四〇九階の彼女 (電撃文庫)

☆☆☆☆☆ 
 そこは、一度滅びを向かえた世界。人々は無数の階層から成る『塔』の中で生活していた。各階層では神の代行機械であるアントロポシュカがその階層世界を管理していた。人々が幸せに暮らすための世界を作る――その目的のためにアントロポシュカは動く。しかし、時の流れはやがてそれらを狂わしていく――。
 そんな幸せに狂った世界たちを一人の少年が旅をしていた。少年の名前はサドリ。相棒のカエルと共に『塔』の外を目指していた。かつて交わした約束をはたさんがために――。
 う〜ん、これはなんとも判断が難しい。結構好きなタイプの話で、なかなか面白いと思える部分もあるのですが、どうにもノリ切れなかった感じ。
 階層ひとつひとつが1つの世界となっている『塔』を、外に出るために下りていくというお話です。この『塔』の設定や、階層を下りるための条件がなかなか面白いですね。また、サドリたちはそれぞれの階層の姿を目の当たりにしたり、その住人達と交流をしたりするわけですが、自分の目的のためには誰かを利用しなくてはならないって言う感じの雰囲気が結構好きですね。
 ただ。どこか中途半端に感じてしまう部分があったりします。もうすこし違った見せ方が合ったのではないか――そう感じたりも。多分、このあたりが乗り切れなかった原因だと思われます。まあ、あくまで私の中でって事ですが。
 まとめ。『塔』の外に出るためにサドリとカエルが旅をするお話。『塔』を出ることを決めたキッカケになった約束を交わした経緯が印象的でした。個人的には今一乗り切れなかったのですが、そのどこか哀しい雰囲気は結構好みの作品でした。
 印象に残ったところ(以下反転)――「すぐ逃げよう。カエルになるのを断ったら、何をされるかわかったもんじゃない」「カエルになればよいではないか。なってみればその魅力も解しよう」――サドリとカエルの会話。カエルの世界でのことです。カエルだけの世界、なんというかシュールだ。個人的にはその魅力はわかりたくないかも(笑)。

ナ・バ・テア

ナ・バ・テア 森博嗣 中公文庫 2005年11月25日

ナ・バ・テア (中公文庫)

ナ・バ・テア (中公文庫)

☆☆☆☆☆☆
 信じるのはメカニックと操縦桿を握る自分の腕だけ。戦闘機に乗って戦うのを生業とする、大人にならない「子供たち」。飛ぶために生まれてきた「僕」は、空でしか笑えない。 
 『スカイ・クロラ』から続くシリーズの第2弾『ナ・バ・テア』です。時間軸的には『スカイ・クロラ』より前の話とのこと。今回もなかなか面白かったですね。
 相変わらずどこか独特な雰囲気が印象的でしたね。全体的に淡々としているのに加え、どこかぼかされたような表現が妙にマッチしていて、不思議な読み心地があります。
 ストーリーは、主人公である「僕」の視点から紡がれるのですが、この主人公が前回も登場したあの人物(以下反転――クサナギ)だったのが意外でした。
 それはそれとして。ストーリーそのものも なかなか面白かったですね。主人公である「僕」の心情が描かれていたかと。まあ、理解できたかどうかは自信ありませんが(苦笑)。
 シリーズとしては、残り3冊あるとのことなので、機会を見て読んでみたいです。

七不思議の作り方

 七不思議の作り方 佐竹彬 電撃文庫 2006年11月25日

七不思議の作り方 (電撃文庫)

七不思議の作り方 (電撃文庫)

☆☆☆☆☆
 その学校にはふつうではないちょっと変わった噂があった。それは学校の七不思議を作り、管理する謎の集団の噂。彼らはSix dministrators of Wonders――通称「SAW」と呼ばれていた。面白いことに目がない男子高校生・秋月千秋はクラスメイト・春日未春と共にSAWの真相を調べようと行動を開始するが――。
 学校の七不思議の噂をめぐるお話です。これは割と面白かったかな、というのが率直な感想かと。
 まず、七不思議を作る組織があるっていう設定が目を引きますね。次はどういう風になるのかな〜とか思いながら読めました。キャラクター達のやり取りも楽しかったです。
 ただ。読んでいる間は普通に楽しいのですが、後で思い返してみるとちょっと物足りなかったかな、という感じがしたりも・・・・。タネあかしが意外に普通ぽかったからかもしれません。あと、秋月の性格が今一良く分からなかったというのもあったり。逆切れ体質っぽいのは演技なんですかね。
 まとめ。あとがきにもあるようにミステリーというより学園コメディっぽいお話。綺麗にまとまっていたラストが結構印象にのこっていて、割と好きだったりします。

七姫物語4

七姫物語 第四章 夏草編 高野和 電撃文庫 2006年9月25日

☆☆☆☆☆☆☆☆
 三宮と戦争状態にあった空澄姫の七宮。他の宮姫たちをも動かした対立が終わり、いま、和睦が結ばれようとしていた。
 自分の役目も一通り終わり、カラスミとしてツヅミの街へと足を下ろした少女は、そこで様々なものを見て、人々と出会い、再会をする。うつろいゆく刻の流れの中で、少女が見て感じたものとは――。
 東和を舞台にした七姫達の物語、その4巻。今回も変わらず面白かった。激動の時代の中でカラスミが見て、感じたこと。それらのことを、どこか温かさをもって読み手に感じさせる。そんな雰囲気がとても心地よいですね。カラスミの視点はなんというか透明感を感じさせます。それはカラスミという少女に嘘のないからなのかなとか思ってみたり。 
 一方で。3巻あたりからカラスミ以外の人物達にもスポットが当てられているように感じるこの作品ですが、そういった登場人物たちもまた魅力的です。特にそれぞれの人物達の掛け合いが印象的で、例を挙げるなら絵描きのエヅと常盤姫の掛け合いや、クロハと黒騎士の掛け合いなどが、個人的には好きですね。
 まとめ。東和という大地を舞台にそれぞれの思惑を抱えて動く宮や人物たちが魅力的な作品。各宮のたち位置もだいたい明確になってきて、これからこの大地を舞台にどういう物語が紡がれるのか、非常に楽しみです。

七姫物語3

七姫物語 第三章 姫影交差 高野和 電撃文庫 2005年5月25日

七姫物語〈第3章〉姫影交差 (電撃文庫)

七姫物語〈第3章〉姫影交差 (電撃文庫)

 七姫物語3巻目です。う〜ん、あらすじが思い浮かばなかったです(苦笑)。
 それはともかく感想。今回も面白かったですね〜。あとがきにもあるように、既刊2冊を空澄物語とするなら、今回は七姫物語という題名通りな印象。七宮であるカラスミのことも描かれてはいるのですが、他の宮姫達にスポットが当てられています。
 お話自体は戦争の事なのですが、だからといって、終始戦闘シーンというわけではなく、あくまで宮姫達の動きが中心。むしろ戦闘シーンとかほとんどなかったかと。騒然とする東和において、それぞれの宮姫達がどのような態度をとるか、それが見所かと。
 あと、今回は三宮ナツメの常盤姫に大きなスポットライトが当てられていた感じ。今までが空澄姫中心だっただけに、他の姫が身近に感じるお話でした。特に常盤姫と絵空師のエヅの掛け合いが好きですね〜。
 今回のことで大きな情勢の変化を迎えた東和。今後どういう展開を迎えるのか非常に楽しみです。

七姫物語2

七姫物語 第二章 世界のかたち 高野和 電撃文庫2004年1月25日

七姫物語(2) 世界のかたち (電撃文庫)

七姫物語(2) 世界のかたち (電撃文庫)

 東和―そこは中原の繁栄からはみ出した大地。そこでは七つの都市が先王の隠し子と呼ばれる姫を擁立し、国家の統一を目指し割拠していた。七つの都市の一つカセン。その都市の守護姫、空澄(からすみ)姫。これは、二人の野望持つ若者と彼らから選ばれ、姫君となった少女の物語。
 七姫物語。第2巻です。うん、面白かった。やっぱり素朴な感じです。
 この作品って、いわいる正義の味方がいないんですね。主人公のカラスミにしてからテンとトエの共犯者という一面も持っていますし、そもそも主人公サイドが戦乱の口火を切っているという変わった作品。だけどそういう理由から主役達が悪役というわけではもちろんなくて、むしろ人間的にはものすごい魅力を感じさせる人たちだと思えます。
 今回もカラスミの視線で描かれる風景や人間模様、色々なことを感じるカラスミの感情が良かった。
 決して善良とはいえない二人(テン、トエ)や、命のやり取りができるヒカゲと共に過ごしながら、いかに彼等のことを大切に思っているかが伝わってきました。また、綺麗事だけでは成り立たない世界において、あくまでも純朴(正直)であろうとするカラスミが魅力的でした。
 それにしてもこの作品、要所要所で描かれている挿絵がとても素敵ですね。なんというか、イメージとぴったりで胸に染み入るようです。個人的には1節と2節の最後の挿絵が好きですね〜。
 印象に残った台詞(以下反転)―「多分、お別れから始まるよ」―カラスミの台詞。一巻の最後と関係している部分。序節のイラストと合わせて、切なげな感情が漂っているように感じました。