日毎に敵と懶惰に戦う

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上野の森美術館『アートで候 会田誠・山口晃 展』

上野の森美術館で、会田誠山口晃の展覧会を。結構な混雑で、時間を追うごとに人が増えている印象。人気あるんだなあ。
いきなり山口晃の石膏デッサンがあるのでなんだか笑ってしまった。でも、しばらく後に描かれた『大師橋図画』とか『十字軍』とかの段階で、かなりかっちり、作風が出来上がっている。会田誠も、1985年あたりの作品からすでにしてカオス。
次の展示室。『大山椒魚』と『ジューサーミキサー』『滝の絵』、大画面が並ぶとすごい迫力。あと『ヴィトン』、ヴィトンが豊作じゃあ(笑)山口晃のは、ニヤニヤしながら丹念に細かいところを追っていくのが楽しい。以前、中目黒のミズマで見た『四天王立像』と『ラグランジュポイント』もあった。
次の部屋、山口晃の東京画シリーズ。いかにも『銀座あたりの古い画廊でやっている個展です』チックな手書き看板が立っていたのは、商業的であることへの自嘲を装った洒落なんだろうなあ。実際のところの真意はわかりませんが。
2階にあがると、さっきの隙の無い作品はなんだったの、というカオス。『山愚痴屋澱エンナーレ2007』。なんかこういうの、小沢剛のスタイルに通じる気配が。無理矢理意味に沈没する(かのように見せる)パンフレットと合わせてお楽しみください。美術評論への壮大な皮肉なのだろうか。『絵はこんなに役に立つ』とか『解読』とかで大笑いしてしまいました。
次の部屋、会田誠の映像作品ザッピングは、ほんとに、よーやるわ!としか言いようの無いすばらしいもの。そして次の部屋に移ると、製作途中の『渡る海文殊』とか『愛ちゃん盆栽』とか大画面の『ひせき』とか『携行折畳式喫茶室』とか、よくもまあ、ひとつの部屋にこれだけ詰め込んだね、とカオス度はますます上がる。ノリノリですね。
別室、山口晃の『すずしろ日記』とかもニヨニヨしながらじっくり眺めてとても楽しいのだけれど(山口晃のイラスト、自画像と奥さんが本当にかわいいですよね…)、やはり白眉は会田誠の『風景の光学的記録におけるイコン化の確率に関する研究』で、新幹線の窓に固定したムービーの、40000枚以上の画像から、『作品として成り立ちうるもの』を選んで、『成り立たないもの』と比較しながら講評する、という作品。そして、そのうちの1枚と明確な意思を持って撮った作品とを比較した結果、偶然の1枚の方が作品として優秀である、という結論…らしい。最後、『会田誠の感覚に納得できましたか』みたいな一枚に、いろんな字で、さんざん書き込みがあったけれど、あれも会田誠に管理された空間なのかしら?本当に大勢で、ワークショップ的に書き込んだのかしら?はてブ的空間になっていて面白。
とにかく、充実していてとても楽しい展示でありました。まだ会期はしばらくあるので、現代美術のイキの良いところを体感したい方は、ぜひ。