今日も徒然、中洲日記

ほどほどに映画が好き。ほどほどに食べることが好き。日々気づいた事を綴ります。

われらが背きし者


ジョン・ル・カレ原作のスパイ小説の映画化というと「裏切りのサーカス」。


ベネディクト・カンバーバッチトム・ハーディが共演して話題になり、観に行ったけど、難しいというか暗いというか、とにかく分かりにくくて(私が単に理解力に乏しいのかも…汗)、またその二の舞で映画に置いてかれるのは困っちゃうなぁと思いつつもやっぱりスパイ映画は観たいので、劇場へ。


すきま風が吹いてる1組の夫婦がやり直すために出かけた先で知り合った男がロシアのマフィアだったことから、命に関わる危険なミッションに巻き込まれていくお話。


設定も途中のエピソードも1度はどこかで目にしたことがあるようなシーンが多いのは確かだし、目の肥えた人にはその分物足りないのかもしれないが、私のような緊張感漂いながらも分かりやすいお話が好きな人間にはぴったりの映画。


まず冒頭はどこかの劇場でバレエの公演を観ている人たちが登場する。その段階で、既になんだか嫌な空気が流れてる。


なんだか分からない名も無き人たちが理不尽に殺されていく。それはこれから登場する人たちの未来を暗示している。


そんな出だしから、もう目はスクリーンに釘付け。


仲間が家族もろとも殺されたことで、次は自分とその家族が標的になると予見したマフィアの男。彼は旅先で出会ったイギリス人夫婦に近づき、監視の目を盗んで、イギリス高官とロシアのマフィアとの繋がりを暗示する証拠を手渡す。


マフィアの中の金の流れの隅々まで熟知した男は人を見る目もあったらしい。


イギリス人夫婦は、とんでもない事に巻き込まれながらも、信義を重んじ、危険に晒された男と家族を守ろうとする。


そこへ向かう行が、特に丹念に描かれてるわけでもないのに、ちゃんと伝わってくる。壊れかけた夫婦の関係が、命の危機に直面した行きずりの家族を救い出すことで再び動き出す。


捜査を担うはずのMI6の捜査官も、自分の息子が罪を犯し、窮地に立たされており、苦しい状況だが、自分たちと国を裏切る輩を許すまじという仕事を超えた正義感のようなものが垣間見える。


登場人物たちが、そういった観る側にも共感しやすい設定になってるのがよかったのかもしれない。


なんだか、凄く引き込まれて、マフィアの男が最後に残したメッセージが見つかるシーンなど痛快なラストで終わり、とっても良かった。


スパイ映画と言っても過激なアクションもほとんど無く、危険な駆け引きに焦点を当てるわけでもなく、本来のスパイ映画とはちょっと色合いの違う、全くの別世界の普通の人間が関わる物語だからこその面白さだったように思う。