派遣法改正

■創作

◎土筆見て墓場の脇に立ち尽くし    禅智

 天気予報は雨であったものの通勤時刻は曇り空。心地よい風が吹いていて気持ちがいい。どことなく、特徴が無い朝である。こんな時でも、一句捻ろうとしていたが、できないまま職場の近くまで来る。職場の前に墓地があり、その土手に土筆が数本立っているではないか。これも春の風物詩であり、今年初めて見た。しばらく、その場に立ち尽くし、しげしげと土筆を見ていた。その間、ちょっと時間が止まったようだ。

■派遣法改正
週間ダイヤモンドからの抜粋である。
非正社員化が進むとの声も挙がっている今国会で審議中の労働者派遣法改正案。主な変更点として、これまで期間制限なく派遣に任せることができた「専門26業務」からすべての業務へと拡大し、一方で同一の労働者が同一職場で働くことのできる期限は上限3年となる予定だ。
『正社員ゼロ法案』という極端なレッテルを貼られているこの改正案だが、本当に正社員の大部分が派遣社員に代替されるのだろうか。また、この改正によって肝心な派遣社員の働き方は改善するのか。
リーマンショックで大量に職を失った派遣社員のような不安定な働き方は、望ましくないとされる。しかし、過去のような高成長が望めない今日、生産量が落ち込む不況期には、派遣等、非正社員の契約更新の打ち切りにより、はじめて正社員の雇用が守られる。派遣社員を制限し、有期雇用を無期雇用にすれば、今後の不況期には、誰も解雇されないと本気で考えているのだろうか。
改正案で、派遣社員の働き方は改善される。たとえば、情報機器操作等で雇われた派遣社員にとって、従来は禁止されていた電話への応答や、来客サービス等、一般の社員であれば当たり前の業務を行うことができるようになる。こうした職場での不必要な摩擦を引き起こす規制は、派遣先の正社員の仕事が派遣社員に代替されないために、わざわざ設けられたものであった。
その代わりに、派遣社員が派遣会社と結んでいる雇用契約次第で、派遣期間の上限が変わる。派遣会社と無期雇用契約であれば、業種を問わず派遣先でも無期限で働けるが、現実にはこうした派遣社員は少数派である。他方で、派遣会社との契約が有期雇用の場合、専門26業務でも、派遣期間は最長3年に制限され、これまで長く働けた職場を離れなければならないという、理不尽な規制強化だ。
今回の改正法には、労働者派遣法の根幹を変える、『正社員ゼロ法案』という極端なレッテルが貼られている。しかし、規制で保護されなければ、正社員の大部分が、本当に派遣社員に代替されるのだろうか。
これは、減反という名のカルテルで米価を吊り上げる一方で、「関税を撤廃すれば日本農業が壊滅」という農業保護の論理と共通している。年功賃金という、労働生産性とかい離した賃金体系で、市場賃金で働く派遣社員と比べた競争力が低下するため、政府に保護を求めなければならなくなるのだ。もっとも、農業保護との違いは、保護政策の犠牲となるのが、同じ日本の労働者という点である。 
現行の「派遣問題」の多くは、実は「正社員問題」の裏返しである。派遣社員をうまく活用する企業は、正社員の働き方の効率性を高める人事管理改革にも結び付けられる。」