『ラテンアメリカ怪談集』J・L・ボルヘス他/鼓直編(河出文庫) 1990年に出ていたものの新装復刊本。編者あとがきによればラテンアメリカにはジャンルとしての怪談は(少なくとも当時)なかったらしく、あとがきもほとんどが幻想小説について割かれていました。 「火の雨」レオポルド・ルゴネス/田尻陽一訳(La lluvia de fuego,Leopoldo Lugones,1906)★★★☆☆ ――その日はすばらしい天気で、通りは人であふれていた。十一時頃、最初の火の粉が落ちてきた。灯心のはぜる火の粉のように、銅の粒が落ちてきた。突然、庭を横切っていた奴隷が叫び声を上げた。背中に穴が開いていて、その奥…