ガラス工芸技法の一種。
この名称は、仏語"Pâte de verre"「ガラスの練り粉」という意味の言葉から来ている。
粘土・ワックス等で作品原形の塑像を造り、石膏等でこれから鋳型を造る。この鋳型に、色ガラスの粉に糊を混ぜたものを詰めて焼成し、鋳型から取り出し、表面を磨いて仕上げる、というもの。
元々はメソポタミア時代から伝わっていたが、古代ローマ時代の紀元前 1 世紀に吹きガラスの技法が生み出されると、その流行に伴って失われ、文献も残されていなかったために「幻の技法」と呼ばれるようになった。
しかしアール・ヌーヴォーの流行した1880年代に、フランスの陶芸家アンリ・クロが技法を復活させると、同時代のアルジィ・ルソーやアルメリック・ワルター、フランソワ・デコルシュモンらの手により、多くの高級美術品が製造された。ただしこれらのガラス作家達はそれぞれの技法を秘密にしたため、19世紀の技法の大半は再び失われた。
1970年代に実験考古学の分野から、メソポタミア時代のパート・ド・ヴェール技法が復活し、現在はこれに改良が加えられて広まっている。一度型を造りガラス粉を詰めるという手間はあるが、造形の作業を常温で行えるため、同じガラス工芸でもバーナーワーク等に比べて安全で容易であり、近年では趣味の美術工芸として一般の人々にも親しまれている。