南アフリカの民族楽器。プラスティック製の長いラッパでサッカーの試合でよく吹かれるチアホーン(スタジアムホーン)の一種。南アフリカでは、サッカー観戦時に必須のアイテム。
試合開始前から試合終了後まで吹き鳴らされ、特に試合終盤では、地元サポーターたちが敵を倒すべく、熱狂的にブブゼラを吹く。スタジアム一体がハチの巣の中に入り込んだような感覚に包まれ、その音の大きさは、チェーンソーが100デシベルなのに対し、ブブゼラは最大130デシベルの音を出す。テレビで観ているだけでも、その音響の凄まじさに圧倒されるほど。
しかし、ただ吹いても音が出ないため、金管楽器(ラッパ類)のように唇を振わせなければならない。
2009年のFIFAコンフェデレーションズカップで南アフリカの地元ファンが吹き鳴らし、大音量の騒音となったことから、選手や海外の観客などから苦情が出ていた。プレー中に選手がコーチやメンバーとコミュニケーションがとりづらいだけでなく、不眠症や集中力散漫、難聴を引き起こす可能性もあり、事態は深刻だ。2010年のFIFAワールドカップでは使用禁止とすることも検討されていたが、大会組織委員会は使用禁止にしないことを決定した。
FIFAワールドカップ開催中の南アフリカのケープでは、ブブゼラ対策で耳栓が飛ぶように売れ、品切れ状態になるという事態も起こった。同時に、ブブゼラへの苦情が逆にPR効果となり、ブブゼラ自体も爆発的な売れ行きとなっている。
サッカー観戦用にブブゼラが使用され始めたのは比較的最近のことであるが、ブブゼラ自体の起源は古い昔に遡る。
ブブゼラの起源には諸説あるが、昔、村の人々を集まるため、KUDU の角を吹いたのが始まりとされている。KUDUとは、アンテロープ、レイヨウとも呼ばれるシカに似た牛科の大形動物で、東アフリカから南部アフリカに分布している。また、ブブゼラの“ブブ”とは、南アフリカ最大黒人部族ZULU族の言葉ZULU語で、「音を出す」という意味。
これがサッカーの応援に使われた始めのころ(1997年)は銅製のものが主流だったが、2001年に南アのスポーツ用品の制作会社がプラスチック製のものを大量生産するようになって、爆発的にその使用が始まった。
特に有名なのが、南アのプレミアリーグのカイザー・チーフとオーランド・パイレーツとの試合である。カイザー・チーフのサポーターが黄色のブブゼラ、オーランド・パイレーツのサポーターが黒白のブブゼラをお互いに負けまいとして鳴らし、ブブゼラが普及するきっかけとなった。
ZULU族には、「ヒヒ(獣)は大音響で殺せる」という言い伝えがあった。つまり、試合の後半でサポーターたちがこのいい伝え通り、相手を「音」で威嚇して味方の応援をする、という意味がこめられている。
ブブゼラは騒音性難聴を引き起こす可能性がある。というのも、85デシベルの音に長時間さらされることで難聴が引き起こされる可能性があるのだが、ブブゼラは130デシベルの音を出すからだ。耳栓の使用が推奨されているが、実際に、3万人収容のスタジアムでブブゼラの音にさらされた11名が、一時的に深刻な聴力の低下がみられた事例もある。
元サッカー日本代表選手の一人、本田泰人は、「ブブゼラがいい動きをしている。やりにくい相手」と高度な比喩表現でコメントし、他のメンバーやコーチとのコミュニケーションがとりづらいことに言及した。
フランス代表DFエブラ(主将)が「朝6時から鳴って眠れない。耳鳴りで夜も眠れない」と話すなど、不評が出ている。
FIFA(国際サッカー連盟)のブラッター会長は2010年6月14日、W杯の試合中に吹き鳴らされる民族楽器「ブブゼラ」に世界中のテレビ視聴者らから苦情が出ていることに関し、「開催国ファンの伝統を禁じるべきでない。ブブゼラは南アフリカの文化であり、ワールドカップの開催を祝福する気持の表れだ」と話し、今後も試合会場でブブゼラの使用禁止は考えていないことを明らかにする見解を示した。