サスペンスの由来は英語の suspend(=宙吊り)に由来していると言う。観客の心を不安定なまま宙吊りにして物語が進行することからの連想だろうが、そうした作品では観客を宙吊るために引きとなる謎ないし展開を用意し、飽きさせないよう工夫を凝らす。 そしてこれらの引きや謎は当然ながら早い段階で明かされなければならない。でないと客は飽きて本を閉じるかチャンネルを変えるか、あるいは席を立ってしまうからだ。序盤で如何に興味を持たせて緊張感を維持させるか、それが作家の腕の見せどころとなるわけだが、今回感想を書いて行く『ロウフィールド館の惨劇』は開幕の一文でそれを見事にやってのける。 ユーニス・パーチマンがカ…