オーケストラによって演奏される多楽章の器楽曲。
ディヴェルティメントのような室内楽から発展し、18世紀前半にハイドンによって形式が確立された。これによりハイドンは「交響曲の父」と呼ばれている。この時代の交響曲は4楽章形式ではあるが各楽章の規模は小さく、演奏時間もそれほど長くない。モーツァルトも多くの交響曲を残しているが、やはり初期のものは小編成かつ小規模の曲であった。しかしモーツァルトは徐々に規模を拡大してゆき、最後の交響曲「ジュピター」は終楽章においてソナタ形式とフーガの融合を試みるなど、音楽史上でも重要な作品となった。ここに「作曲家の音楽的・芸術的理念の統合たる作品としての交響曲」という位置づけを見いだすことができよう。このような精神はそのままベートーヴェンに引き継がれる。ベートーヴェンが9曲の交響曲で示した深い音楽性と精神性はヨーロッパの音楽界に多大な影響を及ぼし、「交響曲こそが器楽の頂点である」という暗黙の了解を生むことになる。そのためブラームスを始めとするベートーヴェン以後の作曲家は交響曲の作曲に大変な苦労をすることになった。
ロマン派の時代になると楽章や形式に縛られがちな交響曲を嫌う作曲家もあらわれ、フランツ・リストによって1楽章形式の交響詩が創出された。なお、交響詩に「○○交響曲」という標題をつけた作曲家もおり、リヒャルト・シュトラウスの「家庭交響曲」「アルプス交響曲」などが知られている。交響詩は基本的に標題音楽でありロマン主義との親和性は高かったが、一方で古典回帰性の強い作曲家や民族意識を音楽へ昇華する国民楽派の作曲家は自らの思想を絶対音楽として表現するため交響曲を作曲しつづけた。
典型的な交響曲は4楽章から成り立ち、第1楽章がテンポの速いソナタ形式、第2楽章はテンポの遅い緩徐楽章、第3楽章がメヌエット(またはスケルツォ)、第4楽章で再びソナタ形式、という構成である。なお緩徐楽章とスケルツォは入れ替わることもある(ベートーヴェンの第九交響曲など)。近現代の交響曲は楽章構成や形式的にかなり自由な作品もある。
など